猫と罰

猫と罰

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 ―最初は文豪たちの猫の愛らしさに惹かれていくのですが、やがて“なぜひとは物語を紡いでいくのか”という重厚なテーマが立ち上がってきます。

 猫から見ると、人間って実に滑稽で、非合理的な生き方をしているように映ると思うんです。食事をして、寝床があれば、それで満足できるはずなのに、なぜか人間は一見すると無駄とも思えることにあくせくして生きている。
 創作もまた、生きるうえで必要不可欠なものではありません。極論ですが、衣食住が揃っていれば、生きていけるはず。でも、作家は必死に物語を紡ぎ、物語によって救われる人もいる。猫から見れば、きっと大いなる無駄にしか映らないでしょう。でも、その中にこそ、人間性の最たるものが隠れている気がするのです。

 ―本作の中でも核となるテーマですね。

 そうですね。人だけがフィクションを創り上げ、無から何かを生み出すという営みに精を出している。この0から1を生み出す瞬間の苦しさと楽しさこそが、人間らしさの正体なのではないかと思います。本作でも、創作の楽しさはもちろんのこと、まるで呪いのように絡みつく苦しさも合わせて描いたつもりです。

 ―ご執筆にあたっての苦楽があれば教えて下さい。

 もちろん、楽しい時も苦しい時もありますが、小説を書くことはやめられません。受賞後は、『猫と罰』の改稿作業にかかりっきりだったので、それまでのように好きなだけ時間を使って新作を書くことができず、苦しかったですね。改稿作業の合間に、アイディア出しやプロット作成することで、創作欲を押さえ込んでいました。
 なぜ書き続けるのかと聞かれたら、やりたくて仕方がないからとしか答えようがないです。理屈では説明できない根源的な欲求であり、たとえ辛くとも、乗り越えた先に見えてくる美しさを表現していきたいです。
 
 ―最後に読者の方々にメッセージをお願いします。

 まずは猫好き、本好きに読んでいただけたらと。あとはクリエイターの方、小説だけではなく、漫画を描いている方でも、音楽を作っている方でも、 何かを創ることに夢中になっている人に届いて、何かを生み出すことを諦めずに、ひたむきに続ける活力になれたら嬉しいです。

【もっと読む】『猫と罰』(宇津木健太郎著・新潮社刊)試し読みはこちらから。