【試し読み】990万部突破!「しゃばけ」シリーズ最新作『なぞとき』④

【試し読み】990万部突破!「しゃばけ」シリーズ最新作『なぞとき』

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江戸は通町にある廻船問屋兼薬種問屋「長崎屋」の病弱若だんな・一太郎と彼を見守る不思議な妖たちがお江戸で起きる怪事件難事件を解決する大人気シリーズ「しゃばけ」! 累計990万部突破の最新作『なぞとき』の刊行を記念して、5日連続で冒頭部分を特別公開いたします。
屈強な佐助が血まみれになってしまい、若だんなも妖も大騒ぎ!! 犯人はいったい誰なの~? 

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 おしろは今回、鈴彦姫と組む事になった。
 是非ぜひ、三味線のおさらい会を開きたいと思ったので、寝起きをしている一軒家へ鈴彦姫をさそい、こう持ちかけたのだ。
「あたしに力を貸してくれませんか。もしあたしが勝って、おさらい会が開ける事になったら、鈴のある神社のおかげだと言って、お弟子さん達に鈴を磨いてもらいます」
「鈴が綺麗になるなら、私は嬉しい。おしろさんに助力します」
 ただ。おしろが大事にしている長火鉢のかたわらで、鈴彦姫は首を傾げる事になった。
「どうやったら、勝てるでしょうか。佐助さんは、小鬼がやったと言ってます。その言葉、簡単に変えたりしませんよね?」
 おしろも頷く。
「つまり佐助さんに問うても、駄目だって事ですよね。なら、事情を承知していそうな人に、聞くしかないと思うんですよ」
「あら、誰なら知っているんでしょう」
 おしろの猫又の目が、きらりと光る。そして、攻略すべき相手の名を口にした。
「そりゃ廻船問屋長崎屋の、水夫かこさん達ですよ。廻船問屋の手代、佐助さんと長く一緒に、働いている人たちです」
 佐助が怪我をしたのは、家の内ではなく、表だろうとおしろは続けた。
「あたしは今日、朝から若だんなと離れに居ました。でも店の奥では騒ぎなど、起きてないです」
 残る場所は長崎屋の店表か、廻船問屋の横手にある、荷揚場にあげばだろうという。
「ええ、そうですね」
「廻船問屋で騒ぐ人はいないでしょう。つまり何かあったのは、堀川沿いの荷揚場です」
 ならば船頭せんどうをしたり、荷揚げをしている水夫達に聞くのが、一番だと言うのだ。
「その考え、素晴すばらしいです」
 娘姿の二人は、大いに納得した。ただ鈴彦姫は、眉尻を下げた。