「生の歌舞伎はいいな」と伝えていくために、僕は舞台に立ち続ける。

 この数年、家の中での楽しい過ごし方を見つけた方は多いですよね。僕たち役者だってそうです。家でのエンタテイメントはもちろん素晴らしいですが、歌舞伎は、歌舞伎座や劇場に足を運んで観ていただくものとして存在していたい。けれどもコロナ禍は今も影響し続けていて、演劇は必要ではないと、歌舞伎から離れてしまったままのお客様がいると思います。そういう方々にどうしたら「生の歌舞伎はいいな」と思っていただけるかを探ることが、今後は大事なのではと思います。
 そのためにも、僕は舞台に立ち続けなければなりませんし、古典の演目を演じていても、劇場での芝居はお客様と息を合わせて成立しているという感覚を伝えるための技術や力量を身につけなければなりません。
 大前提としてお客様のために演じていますが、僕には憧れの先輩方がいて、そういう風になりたいという想いが、歌舞伎の舞台に立っている大きな動機です。吉右衛門のおじさん、もちろん僕の父も揺るがない憧れですが、歌舞伎には様々なお役があって、演目があるので、それぞれに素敵だなと感じる先輩がいます。同じお芝居でも、この方が演じたらここが素敵という魅力があります。
 先輩方の舞台を見た時の感情を、僕の舞台を観てくださったお客様にも持っていただきたい。それが一番です。僕が10代の頃に感動した舞台なら、たとえ難しい言葉遣いでも、若い世代の人にも伝わると思っています。年齢、性別に関係なく感動を伝えることができるような役者になりたいです。