お芝居をしている間、私は年をとっていない

 翌年に私は二度目の離婚を決断しましたが、既婚女性が他の道を選ぶことができるようになったのって、この数十年だと思うんです。昔の女性たちは、今いる場所にとどまるしかなくて、よほどでなければ、自分で道を選び取るなんてできなかったんじゃないかな。
 そこには、仕事という存在が大きくかかわっていると思います。私はそうでした。私にとってのお芝居は常に私を救ってくれた存在であり、生きるために必要なことなんです。
 私は私自身の肉体を通して他人の人生を疑似体験し、もしこういう人生だったら、もし別の人間だったら、と自由になれるんです。
 現世で私がどれほど変化を求めても、性別も年齢も変えられないので、限界があります。しかしお芝居なら、幼い役も高齢の役だってできる。私が持っていない情熱を持っている人、違う何かを欲している人、私のカテゴリーにとどまらない人物を演じられる。
 そして、私はお芝居を通じて自分の人生にその役の豊かな経験をフィードバックしています。人の考え方は、年齢とともに固まっていきがちですが、お芝居をすることで、より自由な発想に導かれ、常に自分を自由に放牧させる、遊ばせる習慣がつくんです。なんかもう仕事なのかどうかわからない(笑)。
 だから、お芝居をした後は、私も変わる。役という一人の人とずっと付き合って、日頃絶対発しない言葉を発し、自分にはない行動をして、その役を体験するので、ひとつのお仕事が終わると、細胞が活性化するんです。あとね、その間、私は年をとっていないんですよ。別の人生を生きているんで。