『消費される階級』
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『消費される階級』酒井順子著
[レビュアー] 鵜飼哲夫(読売新聞編集委員)
著者の『負け犬の遠吠え』が話題になったのは、たとえ美人で仕事ができても、30代以上・未婚・子ナシ女性が生きづらさを感じる時代だったからだ。あれから約20年。今は結婚も出産も個人の自由。多様な生き方を認める時代になり、性差別も以前よりあからさまではなくなった。では、住みよい社会になったのか?
本書は「“親ガチャ”と“子ガチャ”」「反ルッキズム時代の容姿磨き」など21の視点で、姿を変えて登場した社会の凸凹にシニカルな姿勢で目を凝らす。
〈平板化が進む世においては、人々は差を乗り越える術を失い、微細な差にもつまずくようになったのではないか〉という文章には深く頷(うなず)いてしまった。暴言に鍛えられた昭和世代の杞(き)憂(ゆう)でなければよいが。
かつてはひとり身でいると、あれこれ世話をやかれて面倒だったが、今は個人の選択だから「そっとしておこう」と気づかわれ、ますます孤立が深まるのでは……など鋭い指摘も並ぶ。
ポリコレにこだわるあまり、きれい事がはびこり、キャンキャン遠吠えすらしにくい社会は幸せか。考えさせられる一冊です。(集英社、1870円)