『異次元緩和の罪と罰』
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安く貧しく不安定 こんな国に誰がした
[レビュアー] 林操(コラムニスト)
自民党の総裁選と金融市場。投票前に高市有望説が出れば円安・株高に振れ、決選投票で石破が逆転すると一転、円高・株安に。
あのとき読んで笑えて泣けたのは、与党に優しい系メディアの経済記事。安倍の世の復活を謳う高市が総理なら株価ウハウハとか、バラまき反対の石破が当選したら今度は、日経平均4万円台回復とか、“相場OKだから政治もOK”と囃すシグナルだらけで、相場に政治が左右される国へとニッポンが墜ちきった現実を再認識させられました。
年金基金や日銀が株をガンガン買って、株価が下がれば年金や円への信頼がグラグラ揺らぐ。国がバカバカ刷る国債を日銀がガバガバ買って、金利(株や外為と連動)が上がれば日銀の財務から国家の財政までがグシャグシャ崩れる。同じ相場依存国家でもアメリカのように経済成長ができてるならともかく、この国は今や、安く貧しく不安定。
そういう安倍の経済(アベノミクス)=Apenomics(猿の経済)の戦犯は誰か。その果ての窮地を脱するにはどれほどの犠牲が要るのか。
この問いにまっすぐ、わかりやすく答えてくれる人も書も少ないなか、元日銀幹部の山本謙三と初の著書『異次元緩和の罪と罰』は稀有な例外。相場金融経済に疎い昏いと胸を張れるワタシもアナタも、まえがきに触れただけで現在過去未来の惨状が見えてくるし、あとがきまで読み通せば、己の経済的足場の危うさから誰に石を投げればいいのかまでが痛いほどわかる。