「今すぐに投資をやめて預貯金やインフレに強い国債を」森永卓郎が「新NISA」を煽る政府や金融業界に立ち向かう

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投資依存症

『投資依存症』

著者
森永 卓郎 [著]
出版社
三五館シンシャ
ジャンル
社会科学/経済・財政・統計
ISBN
9784866809403
発売日
2024/09/10
価格
1,650円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

博打よりも地に足ついた生活を “原点回帰”を説く警世の書

[レビュアー] 田中秀臣(上武大学教授)


森永卓郎さん

 日本の株価は乱高下を繰り返している。日経平均株価でみると、年初が三万三千円台だったのが、バブル期を超え、七月初めには、四万二千円台まで上昇した。「息の長い上昇トレンド」だと評価するエコノミストたちもいた。ところがその後、一九八七年十月の株価暴落「ブラックマンデー」を超える大幅な下落を経験し、それ以後も荒い動きだ。

 だが、政府も識者たちも「株価に一喜一憂せずに、長期で資産運用を」と賢しらに発言している。まるでへたな株の営業をみているようだ。この状況に対して、日本人全体が「投資依存症」にかかってバブルが起きている、と断定したのが本書だ。

 モリタク先生(著者の愛称)は、がんと闘い、ザイム真理教(財務省の緊縮政策)やさまざまな日本のタブーに立ち向かっている。今回の相手は、新NISAなど投資ブームを煽る政府や金融業界だ。

 長期的な投資はギャンブルとは違う、というよく聞く説明も、モリタク先生は一刀両断だ。資本主義とバブルはセット商品だ、というのがその理由だ。高い確率で、これから本格的なバブル崩壊が起きて、資本主義経済自体の見直しが起きるだろう。せっかく老後の資金として貯めたお金も消滅してしまう。今すぐに投資をやめて預貯金やインフレに強いタイプの国債を持った方がいい、というのがモリタク先生の見立てだ。

 この決め打ち的な予測は評価が割れるだろう。だが現状の株価がバブル的である、という本書の指摘は重要だ。なぜなら過去にないほど、実体経済と株価の時価総額の開きが拡大しているからだ。バブルである可能性は少なくとも否定できない。

 またユニークな点は、郊外で農業を中心にした、生活費のかからない暮らしをすすめている点だ。強欲の支配するマネーゲームよりも、汗水流した経済が中心であるべきだ、というモリタク先生の警告には落ち着いて聞くべき真理がある。

新潮社 週刊新潮
2024年10月10日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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