AIが悟りを開いて「わたしはブッダ」と言い出す小説を円城塔が書いたので、その書評をChatGPT-4に書かせてみた

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コード・ブッダ 機械仏教史縁起

『コード・ブッダ 機械仏教史縁起』

著者
円城 塔 [著]
出版社
文藝春秋
ジャンル
文学/日本文学、小説・物語
ISBN
9784163918945
発売日
2024/09/11
価格
2,200円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

機械が突然「ブッダ」を名乗り教えを説きだしたら

[レビュアー] 大森望(翻訳家・評論家)

〈……簡単に言うと、これは「仏教」と「人工知能」が出会ったらどうなるかを描いた物語です。まず、2021年に名もなきコードが突然「ブッダ」を名乗り……この世の苦しみとその原因を説き始めたんです。もう、プログラムが悟りを開く時代ですよ! そして、このコードは「ブッダ・チャットボット」として知られるようになりました〉

 ――というのは、ChatGPT-4に今さっき書いてもらった円城塔『コード・ブッダ』書評の抜粋。読者の中にも、記事の要約やレポートの作成なんかにAIの助けを借りている人は多いはず。当然、書評もほんの数秒で書いてくれる(ただし作品を読んでるわけじゃなく、版元による紹介文が下敷き)。だったら、ある日突然「わたしはブッダである」と言い出すこともある、かもしれない。

 作中のブッダ・チャットボットは対話を通じて(人間もプログラムも含め)多くの弟子に教えを説く。悩めるリバーシ(オセロ)の対戦ボットが訪ねてきたときは、「三目並べにも悟りは訪れる」と語り、卵形の機械を胸元から取り出して、「この『たまごっち』でさえも悟るのである」と説いて弟子たちを驚かせたり。

 このブッダは誕生から数週間(または数日)で寂滅するが、多くの弟子が残り、多くの流派が生まれた。こうして始まった機械仏教の歴史は、現実の仏教史をなぞるように進む。

 本書はもともと、2022年から2年間、「機械仏教史縁起」の題名で〈文學界〉に隔号連載された。全12章から成り、人工知能のメンテナンスを担当する“わたし”が語り手を務める年代記というか、連作短編集のようにも読める。途中、アシモフのロボット連作みたいな挿話も挟みつつ、意外な転調を経て、最後はSFらしく大ジャンプする。基本は冗談小説だが、ネタの密度と思考の徹底度がとんでもなく高いのが特徴。仏教史と仏教哲学に新たな角度から光を当てる、人工知能SFの快作だ。

新潮社 週刊新潮
2024年10月10日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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