川谷絵音とカツセマサヒコが作品を「ハッピー」にしない理由とは?──カツセマサヒコ×indigo la End『夜行秘密』創作秘話対談
対談・鼎談
『夜行秘密』
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バズることに悩む川谷絵音に共感して出た答えは?──カツセマサヒコ×indigo la End『夜行秘密』創作秘話対談
[文] 双葉社
〈indigo la Endの4人が語るように、小説『夜行秘密』は、アルバム『夜行秘密』に収録されている14曲のタイトルや世界観を大幅に拡張させ、14篇から成る1つの大作となっている。各曲のキーワードが各篇の中でポツリと輝いていたり、心情や風景だけが重なっていたりする中で、楽曲からは想像し得なかった男女7人が自身の存在意義や居場所を探し求めるストーリーが繰り広げられる。歌詞からだけでなく、indigo la Endの大きな魅力のひとつである各楽器のアレンジからも物語のアイデアは膨らんでいった。〉
カツセ:最初に、歌詞もサウンドもメロディも全部分解して、1曲ごとに「この曲はこういう世界観で主人公はこんな感じ」といった3行くらいのまとめを作って、それらを混ぜたり組み直したりしてひとつの物語にするという作業をやったのですが、それにすごく長い時間をかけました。喪失と後悔をテーマに書こうと決めたのも、アルバム1曲目の「夜行」と最後の「夜の恋は」からインスピレーションをもらったものです。「夜行」の終わりが《夜行秘密 一人で握った》で、秘密って二人でないと成り立たないものなのに「一人で」と言っているから「喪失」が見えて、最後「夜の恋は」は《好きにならずにいたかった》というふうに「後悔」で終わるので。あと、indigo la Endは、1曲1曲深く聴いたときにそれぞれの楽器がかなり個性的な動きをしている印象があって、歌詞だけでなく、鳴ってる音やフレーズも物語の世界に昇華させたいと考えてました。たとえば「夜漁り」だったら、僕は間奏のカウントを刻むところがすごく好きなので、物語のどこかにカウントをするシーンを作ろうと思って、入れました。
川谷:カツセさんが、「『華にブルー』はすごく綺麗で美しい曲だけど、2サビの終わりでドラムがカオスになっていくのが印象的で、物語がカオスになっていく感じはそのサウンドから生まれた」と言っていたのでハッとしましたね。ちゃんとサウンドからも小説の世界観ができてるんだなって。
佐藤:アレンジまで物語に昇華してくれて、すっごい嬉しいです(笑)。
カツセ:indigo la Endの楽曲は、パッと聴いたときの印象と、深く掘ったときの印象が、どの曲も結構違うんですよ。それを楽しめるようにもしたいなと思って物語に反映させました。あと、アルバムのジャケットを見て「今回は赤いんだ」と思って、黒と赤というイメージは自分の中でブレずにいましたね。indigo la Endってブルーのイメージがあったから、ここで変えてきているんだったら、indigo la Endにとっての「新たな」、もしくは「別の」軸に自分の小説が存在するのは光栄なことだし、色々やっていいのかもなと思えたんですよね。