『第三次世界大戦をいかに止めるか』ビル・エモット著

レビュー

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク

第三次世界大戦をいかに止めるか 台湾有事のリスクと日本が果たすべき役割

『第三次世界大戦をいかに止めるか 台湾有事のリスクと日本が果たすべき役割』

著者
ビル・エモット [著]/藤井留美 [訳]
出版社
扶桑社
ジャンル
文学/外国文学、その他
ISBN
9784594096465
発売日
2024/07/31
価格
2,200円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

『第三次世界大戦をいかに止めるか』ビル・エモット著

[レビュアー] 櫻川昌哉(経済学者・慶応大教授)

 台湾をめぐる紛争は、米中が直接対決する核戦争に発展する恐れがあることが、台湾有事を抑止する鍵となると著者は読み解く。

 中国の理想は、台湾を領有して「ひとつの中国」を実現することであるが、核戦争のリスクは冒したくない。中国にとって望ましいのは、米国が介入に乗り出さないと確信できるシナリオである。そうすれば、台湾は手に入る。

 一方、米国にとって望ましいのは、米国が介入に乗り出すだろうと中国が恐れるシナリオである。そうすれば、中国は台湾に手を出せない。つまり、中国の侵攻に対して米国が断固として介入する意志をもてるかどうかが、台湾有事の決め手になる。

 さて日本である。米国の極東戦略の枠組みを利用しつつ、台湾有事に備えて着々と軍備を増強していくことが、米国が中国と向き合う意志を強固とし、抑止は効果的となると説く。実は台湾有事を抑止するためには、思っている以上に日本の役割は大きいのである。

 台湾有事のリスクに対して、日米中がどのように関わっているかを明確に述べた良書である。藤井留美訳。(扶桑社、2200円)

読売新聞
2024年9月20日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク