「ほとばしる自己愛」「政治資金も下半身も管理できない」 自民党70人以上の議員を評価した一冊

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自民党の大罪

『自民党の大罪』

著者
適菜 収 [著]
出版社
祥伝社
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784396117023
発売日
2024/08/02
価格
1,012円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

迷惑・粗忽・天性のバカ 「人」で探る自民党の劣化

 007の「死ぬのは奴らだ」、原題はLive and Let Dieで、慣用句のlive and let liveの末尾をモジり、「自らは生き、他も生かせ」を「自らは生き、他は生かすな」へと変えた。

 で、ワタシの場合、見たり聞いたり考えたりするたび、この原題が必ず頭をよぎるというテーマがありまして、それは自民党。英語だとLiberal Democratic Partyで略称がLDP、この3文字がLet Die Partyに思えてならないのよ。

 この「死ぬのは奴らだ」党について、政治家70人以上への評価を切り口にレクチャーしてくれるのが、『自民党の大罪』。世は総裁レースの只中ゆえ、出走(希望)の馬や鹿に限って評定をちょと紹介しても――「ほとばしる自己愛」「ただの迷惑な人」「そもそもいかがわしい人間」「粗忽にもほどがある」「ずさんだねえ」「政治資金も下半身も管理できない男」「すがすがしいまでの天性のバカ」。

 こういう物言いが決して床屋政談の印象批評に陥らず、たとえ訴えられたとしても負けないほどの的確な断罪たりえているのは、忘れられがちな事実をあらためて並べ、それをきっちり踏まえているから。

 著者の適菜収は教養を基盤にミギやヒダリのインチキを正しく愉しく「バカ」と断じてきた巧者。今回も「生き、生かせ」の国民政党LDPが劣化を続けて「生き、生かすな」の独善結社LDPへと堕した惨状を見事に描くゆえ、まず今、読んで嗤い、選挙が迫ったら再読して怒りましょうや。

新潮社 週刊新潮
2024年9月5日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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