『戦争は、』ジョゼ・ジョルジェ・レトリア文/アンドレ・レトリア絵

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戦争は,

『戦争は,』

著者
ジョゼ・ジョルジェ・レトリア [著]/アンドレ・レトリア [イラスト]/木下 眞穂 [訳]
出版社
岩波書店
ジャンル
文学/外国文学、その他
ISBN
9784000616393
発売日
2024/04/18
価格
2,200円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

『戦争は、』ジョゼ・ジョルジェ・レトリア文/アンドレ・レトリア絵

[レビュアー] 宮部みゆき(作家)

 ポルトガル語で綴(つづ)られ、世界で十五の言語に翻訳されているという本書のなかに登場する文章の一つ一つは、そう長いものではない。全て「戦争は、」と語り出し、様々な言葉があとに続く形になっている。ビジュアルでご紹介している見開きページの一文は、「戦争は、凶(きょう)悪(あく)な顔をいくつも持つ。」だ。

 ページを繰りながら、自分だったら「戦争は、」の後にどんな一文を続けるだろうと考えた。本書を手に取る多くの人びとが、同じように思案することだろう。その人びとは、戦争が遠い記憶になった国に住んでいるかもしれないし、今まさに窓の外で戦争が雄(お)叫(たけ)びをあげている国の市民であるかもしれない。戦争は、世界から消えないのだ。

 作者は親子で、ジョゼさんが父親、アンドレさんが息子だ。今秋、作者の来日イベントの企画もあるそうです。木下眞穂訳。(岩波書店、2200円)

読売新聞
2024年8月2日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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