『ルポ 海外「臓器売買」の闇』読売新聞社会部取材班著

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ルポ 海外「臓器売買」の闇

『ルポ 海外「臓器売買」の闇』

著者
読売新聞社会部取材班 [著]
出版社
新潮社
ジャンル
社会科学/社会
ISBN
9784106110399
発売日
2024/04/17
価格
902円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

『ルポ 海外「臓器売買」の闇』読売新聞社会部取材班著

[レビュアー] 遠藤乾(国際政治学者・東京大教授)

 何かあるたびに、グローバル化は終わったと言われる。しかし、それは形を変えて持続し、進化する。

 お金や情報は世界を回り、サプライ・チェーンは変容しただけで存続する。もちろん、排出された二酸化炭素は国境を知らない。

 それは、経済や環境だけでなく、生活や身体に密接な領域にも浸透する。日本でも多くの外国人が流入し、介護、旅行、流通の場を支えている。プロフィール付きの精子や卵子まで国境を超えて取引される。

 そのなかでも、臓器売買の越境化は、犯罪と背中あわせだ。約1万5000ドルで自分の臓器を売り、貧困から束(つか)の間の脱出を図る。

 その裏側には、臓器を求める病人がいる。国内で需給がマッチすればよいが、日本ではドナーが極端に少ない。腎臓の場合、通常10年待ちだ。いきおいお金を積んで海外で、となる。そこに、怪しいブローカーの出番がある。

 この新書は、東京からウズベク、トルコまでの現場を1年半追跡し、国境を超えて臓器がやりとりされる様を活写する。加えて明らかになるのは、日本政府の取り組みの弱さである。(新潮新書、902円)

読売新聞
2024年7月12日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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