『Z世代化する社会 お客様になっていく若者たち』舟津昌平著

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Z世代化する社会

『Z世代化する社会』

著者
舟津 昌平 [著]
出版社
東洋経済新報社
ジャンル
社会科学/社会
ISBN
9784492224175
発売日
2024/04/17
価格
1,760円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

『Z世代化する社会 お客様になっていく若者たち』舟津昌平著

[レビュアー] 佐藤義雄(住友生命保険特別顧問)

不安抱く若者 今の「写像」

 本書は、大学生や20代のビジネスパーソンなどの、Z世代の動向を主に取り上げています。今やこの世代は消費のトレンドを決めるとさえ言われています。SNSを使いこなし、環境など社会問題にも敏感で、イノベーションに取り組むなど、その意識は高いという見方も多いようです。世の中をガラリと変える世代と持ち上げる論調も最近目立ちます。

 この本は、この世代に日常的に接している大学の先生が企業やビジネスの視点を中心に日本のZ世代の有り様を探り、この世代がその上の世代とどれだけ思考や行動の様式が違うのか、その上の世代と、もはや断絶しているのか否かを論じたもので大変興味深いと感じました。

 先生の分析はどうなのでしょう。この世代の特徴として、リスク回避志向が強く、目立ってしまうのは嫌だが平均よりちょっと上にいたいという気持ちが強い、自分は他では通用しないのではという不安に常に苛(さいな)まれている、成果より費用(時間)対効果を重視する、社会的課題について大多数は言われるほど意識は高くない、などを挙げています。こうした結果をみると、先生は上の世代がびっくりするふるまいはあるものの決定的な断絶はないといいます。Z世代は不安感が強く費用対効果を重視するなどの特徴から、発言や行動は奇異に見えてしまうかもしれない。ですが、それは今の社会の余裕のない、息苦しい風潮が敏感な若者に目立つ形で現れているだけだと主張するのです。つまりZ世代は今の社会の「写像」というわけですね。

 この本ではZ世代の若者に向けた著者のアドバイス、この世代をターゲットにしたビジネスの現状、満点人間になることを強いられているこの世代の上司や教師である方々へのメッセージが、ややシニカルな独特のユーモアに満ちた文体で語られています。結論やアドバイスの内容には賛否両論あるでしょうが今の世を知るためにお薦めしたいユニークな一冊です。(東洋経済新報社、1760円)

読売新聞
2024年6月28日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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