無意識に人を傷つけてきた自分に気づいたときの後悔…ブルーな過去と向き合う浅野いにおとカツセマサヒコが語る

対談・鼎談

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ブルーマリッジ

『ブルーマリッジ』

著者
カツセマサヒコ [著]
出版社
新潮社
ジャンル
文学/日本文学、小説・物語
ISBN
9784103556916
発売日
2024/06/27
価格
1,760円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

浅野いにお×カツセマサヒコ・対談「男子ブルーを語る」

[文] 新潮社

結婚の正体


『ブルーマリッジ』で無自覚な加害をめぐる物語を綴ったカツセマサヒコ氏

浅野 あとそもそも、「結婚ってなんなの?」みたいなことも最近考えるんですよね。作中でも両親への挨拶のシーンがあるじゃないですか。主人公の感情が最も現れるところだと思うんですけど、あの感じは想像できる。実は僕、両親への挨拶ってしたことないんですよ。色んな意見はあると思いますが、自分はどうしても必要性を感じられなかった。

カツセ 浅野さん世代の親御さんだと、ちゃんとやれってなりませんか?

浅野 たまたま相手方の親は挨拶が必須という感じではなかったのと、自分の親に対しては昔から距離感のある関係性だったので。親には結婚するって話すらしてない。何も言わないで2回結婚して、2回離婚しています(笑)。

カツセ あとからネットニュースで全部知るという(笑)。

浅野 そうそうそう(笑)。結婚に対しては元々積極的なタイプではなかったので、疑って考えることが多かったですね。なんでそんな「大層なこと」扱いするのかとか、なんで結婚をこんなにもハッピーなものに世の中は作り上げてしまったんだろうとか。

カツセ 以前、エッセイ(『漫画家入門』)で、結婚する理由は「財産を分けたいから」というお話を書かれていましたよね。

浅野 そうです。別に親に対して恨みはないのですが、親にだけ財産が行かないように、配偶者がいた方が良いなと。雨宮も作中でそれに近いことを言っている部分があって、とても共感できるポイントでした。

カツセ そのエッセイを読んで、結婚に対する価値観がおもしろい! と思ったことも、『ブルーマリッジ』につながったのかもしれないです。

浅野 僕みたいな考え方も今はそこまで特殊じゃないというか、結婚に対してある意味で柔軟になっているし、むしろ良いイメージが無くなってきて、ネガティブにとらえている人が増えてきている印象があります。

カツセ 逆に、離婚に対してポジティブなとらえ方をする人も増えていて、それが健全だよなとも思います。人ってそんな簡単には変われないので、相性が悪ければ苦痛も多いでしょうし。でも、現実はそうなんだけど、少しずつなら変化していける、という希望も捨てたくないんです。おっさんというだけで煙たがられる時代で、土方のような中年はどう変化して生きれば良いのか。浅野さんはおじさんを描かれる時、どういう気分でいますか? 『零落』の深澤とか、『MUJINA INTO THE DEEP』のテルミは個人的にすごい好きな中年キャラクターなのですが。

新潮社 波
2024年7月号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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