無意識に人を傷つけてきた自分に気づいたときの後悔…ブルーな過去と向き合う浅野いにおとカツセマサヒコが語る

対談・鼎談

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ブルーマリッジ

『ブルーマリッジ』

著者
カツセマサヒコ [著]
出版社
新潮社
ジャンル
文学/日本文学、小説・物語
ISBN
9784103556916
発売日
2024/06/27
価格
1,760円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

浅野いにお×カツセマサヒコ・対談「男子ブルーを語る」

[文] 新潮社

主人公への未練


自身の結婚や離婚についても語る人気漫画家の浅野いにお氏

浅野 雨宮はまだ20代で、もう一人の主人公の土方は50代。50代男性って娯楽作品では主人公になり得ないキャラクターですよね。サスペンスとかだったら別ですけど。リアルな生活を描いたものだと中年男性は全方位から嫌われがちなので、物語にならない。

カツセ 僕はどちらかといえば土方のほうが好きで、本当は彼をメインに書きたかったんです。二人を交互に描く構成は最初から同じでしたが、読んで頂いたものとは違い、元々は土方の離婚話から始まる展開になっていました。でも、編集者が首を縦に振らなくて(笑)。

浅野 それだと印象がかなり変わりますね。

カツセ 何度も書き直していくうちに雨宮を優先することになり、若い彼の物語を中心にしたら軸が定まっていったという感じですが、自分としては少し悔しかったです。

浅野 ほとんどのコンテンツって10代20代の若者が主人公ですもんね。でも自分は若者じゃないし、そういうの読んでもな……って思ってしまう。実年齢が土方に近づいているので、この作品は読みやすかったです。ところでカツセさんってご結婚されてますっけ?

カツセ はい、結婚してもう12~13年は経ちますね。

浅野 では、結婚生活がどういうものかも知った上で書かれたと。結婚だけじゃなく、仕事の話の印象も強いですよね。男の場合、どうしても仕事の方に目が行きがちだから、創作でも創作以外でも、男性が結婚を語るコンテンツが少ないのかもしれない。例えば、僕も数年前まで結婚してましたが、結婚についてインタビューで殆ど聞かれたことないんですよね。

カツセ そういうのも、この作品に興味を持って頂いた原因としてあるのでしょうか?

浅野 そうですね。今、社会において男性という存在自体が生きているだけで加害性がある、という言葉も出てきています。それも踏まえた上で、男性が結婚について語っている機会が非常に少ないという不均等さが、自分としては気になるんです。

カツセ たしかにそうですね。

新潮社 波
2024年7月号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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