「池田先生のもとに鶴が…」宗教2世で元創価学会員「長井秀和」が語る池田大作の“聖人伝説”

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池田大作と創価学会 カリスマ亡き後の巨大宗教のゆくえ

『池田大作と創価学会 カリスマ亡き後の巨大宗教のゆくえ』

著者
小川 寛大 [著]
出版社
文藝春秋
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784166614509
発売日
2024/02/16
価格
1,045円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

「カリスマ」の実像に迫った労作に「創価二世」が書き加えたいこと

[レビュアー] 長井秀和(西東京市議)


「間違いない」で一世を風靡、現在は西東京市議の長井秀和さん

 創価学会とは言わずと知れた日本最大の新宗教団体で、池田大作はその教団の中心人物だというのが一般的な認識である。昭和生まれの方なら一度は当該教団の信者から聞き及んで、またはメディアで取り沙汰されて池田大作を知っているのではないだろうか。本書は、創価学会の信者が何故池田大作を慕い、活動の源泉としてきたか、一定の答えを示している。

 創価学会は社会のセーフティーネットの受け皿からこぼれ落ちた報われない階層の人々に手を差し伸べ、希望を示していった。その先頭に立ち、庶民の味方である指導者として池田大作が一定の支持を得て、巨大な宗教ネットワーク・政治的な力もある互助組織を形成してきた。本書はそう考察する。

 だが、創価二世として現場で勧誘活動・選挙活動も厭わずこなしてきた元会員の私は、本書の記述に書き加えておきたい。

 例えば本書は、創価学会が少なくとも公式には、教祖の神秘の宗教パワーというような超常現象の奇跡で信者を教導したりしなかったと論じている。しかし、昭和平成を通して、会内では池田大作の超常現象じみたエピソードが“ほぼ公式”にこれでもかと流布されてきた。

「池田先生のもとに鶴が舞い降りた」「先生が会館に来たら突然花壇の花が咲き誇った」「体調不良の御仁に先生が手をかざして題目を唱えたら治った」「病気の家族がいることを言い当てた」「海外の要人が先生の前世の家族の生まれ変わりだった」……。

 池田大作の聖人伝説は、新宗教の多分に漏れず、会内に拡散していたのが実状なのである。

 会内では、池田大作による民間外交の成果も過剰に喧伝されていた。私は「池田外交によって、各地の紛争が収まり、平和均衡が保たれてきた」と会員に説く幹部の姿を何度も目にしたことがある。このように学会では「世界の知識人が列を成して池田大作に叡智を求め、主要国の政治経済の基盤や施政の要に池田大作の教えがある」という一種の都市伝説が吹聴され、会員は人類救済の偉大なる平和指導者・池田大作という認識を強固にしていった。

 創価学会では聖教新聞等の公式発信を基に、現場で盛大な盛り付けをし会内の池田の神格化を促進。宗教儀式的にも、池田大作と呼吸を合わせて祈ることを求められる。宗教団体の隆盛は、公式の見解に如何に拡大解釈を加え信者を教導していくのかが鍵であるという点を理解しないと繙けないのである。

新潮社 週刊新潮
2024年6月20日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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