『ダーウィンの進化論はどこまで正しいのか?』
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『ダーウィンの進化論はどこまで正しいのか?』河田雅圭著
[レビュアー] 為末大(Deportare Partners代表/元陸上選手)
自然淘(とう)汰(た)、環境に適応した種のみが生き残る――。ダーウィンが残した考え方は、あらゆるところで引用されてきた。拡大解釈され社会ダーウィニズムにも利用された。進化と生き残りの法則について説明を試みていて、使い勝手が良かったのだろう。
勘違いされて利用されることも多い。生物が環境におのずから適応しようとしていると捉えられるのもその一つだ。実際には生物はランダムに変化し、たまたま環境に適応した種が生き残っているようだ。
またどんな環境にも適応できるように多様性が重要と言われる。集団内の遺伝的多様性は進化の上で重要で、多様性が小さいと適応が制限されるが、大きすぎても全体の適応度が低下し、進化を制限するという。
本書は丁寧に現在の進化論を紹介している。丁寧であることが重要だ。進化の法則のアイデアを引用し、他の世界に適用するとき、「滅びるのは自然の摂理だ」という危険な言説につながりやすい。だからこそ、進化論っぽい話ではなく、進化論そのものが今どこにあるのか知っておく必要がある。(光文社新書、1100円)