『訟師の中国史』
書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます
『訟師の中国史』夫馬進著
[レビュアー] 産経新聞社
訟師(しょうし)とは、宋代から清代までの中国で訴訟しようとする人々を助けた者。近代化が始まる前の中国は、訴訟が盛んだったという。
本書は訴訟社会の実態を明らかにしたもの。訟師の仕事ぶりが興味深い。例えば明・清時代の訟師は、訴状の受理請負人。「デタラメなところがなければ訴状にならない」といわれ、訟師は一人も殺されていない土地争いの表題を「一網打尽に殺された一件」とするなど訴状を目立つようにした。「掠奪して殺した」「むごたらしく殺された」など、どぎつい表現がマニュアル本に満載されていたそうだ。欧州やイスラム世界の法廷との比較も。(筑摩選書・2090円)