『「この人なら!」と秒で信頼される声と話し方』
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【毎日書評】この人なら!とついていきたくなる「説得力」の高め方
[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)
『「この人なら!」と秒で信頼される声と話し方』(下間都代子 著、日本実業出版社)の著者は、フリーのアナウンサー、ナレーター。FM802のアナウンサーから始まり、レポーターやラジオのパーソナリティ、司会、ナレーション、講師業など、「声」にまつわる仕事を30年以上続けているのだそうです。
注目すべきは、“秒”で信頼されるためには、伝えることばの内容よりも、適切な「声」と寄り添った「話し方」が重要なのだという考え方。さらにいえば、「本音」ではなすことが欠かせないというのです。
私は日頃から「本音」で話していますし、話したいと心がけています。
「本音」で話すとき、「声」には「真実味」があふれてきます。これが「人柄」です。
そして、単に「自分が言いたいだけの本音」ではなく、相手目線で考えた「伝えたい本音」で話すことが大切です。(「はじめに」より)
「伝えたい本音」で話せば、話し方には「相手を思いやる心」や「慈しむ心」が伝わるということ。著者はそれを「愛」と表現していますが、とはいえ以前は「愛」をうまく表現できなかったのだとか。当時は「本音をズバッと伝えて相手を言い負かす」ための「本音トーク」を重視していたというのです。
それはひとえに自分に自信がなかったから。そして、自信がないのを隠すために、自分本位の小さな物差しで「自分が正しい!」と思うことを「良い声」を武器にして強く押し付けていたのです。(「はじめに」より)
そんな失敗があったからこそ、本当の意味での本音に気づくことができ、やがて信頼関係を築けるようになったということ。そうした経験を軸に書かれた本書のなかから、きょうは第4章「この人なら! とついていきたくなる『説得力』に焦点を当ててみましょう。
信頼される人の共通点は、「説得力」があること
信頼される人に共通する特徴のひとつは、「説得力」だと著者は主張しています。しかし、「説得力がある人」とは、そもそもどんな人のことを指すのでしょうか?
この点について著者はまず、「感情に左右されない信念を持っている人」だと考えているのだそうです。信念には「根拠」と「裏づけ」があるはずであり、つまりは長年の経験や思考、知識があってこそ、説得に値する発言や行動が可能になるということ。とくに「経験」があるかどうかは、説得力に大きく影響するといいます。
失敗も成功も、学びも挫折も、生きてきた年数にかかわらず、どれだけ「考え」どれだけ「行動」した「経験」があるのかによって「説得力」が決まる。経験は「無形の財産」だ。そして、経験に基づく【信念】を持っている人こそ「信頼」される。(186ページより)
ただし、信念があるだけでは、「説得力がある」といい切ることはできないようです。
その【「信念」を言語化】し、具体的に説明できる、あるいは【「エビデンス」や「理屈」を示して】相手が納得するような説明ができなければいけない。
それができてはじめて「説得力がある人」となる。(187ページより)
「信念」があって説得力を感じさせる人は、発言にも行動にもブレがないわけです。(186ページより)
「説得力」が高まる2つのポイント
著者いわく、「声」と「話し方」だけで説得力を持たせるために重要なのは「声の芯」と「話し方の文末」。説得力は、このふたつで決まると断言しているのです。
「声の芯」の肝となるのは、「腹式発声ができているかどうか」。加えて、場面や話の内容に応じた「声のトーン」を使い分けられること。
ちなみに説得力を感じさせる声は、高いトーンよりも低いトーンのほうがいいようです。ただし、それは声質の高低のことを指すわけではないといいます。
人それぞれの声の特性に、「高め」「低め」はあるものです。つまりはその人の持っている音域のなかで、「低い部分」の音をしっかり活用することが大事だということです。重要なのは、話の内容に沿って、適度に低い音が出てくること。
たとえ声のトーンが低かったとしても、“ただ全体的に低いだけ”では説得力が生まれなくても当然。その、自分ならではの低いトーンのなかに、高い音と低い音という両方の要素があってこそ、そこに説得力が生まれるということです。(188ページより)
「説得力」は文末で決まる
「芯のある声」と「声のトーン」に加えて重要なのは「文末」の話し方であり、そのポイントは2つあるのだそうです。
①文末まで声を出す、②文末を下げる の2つ。このポイントを押さえるだけで一気に信頼感は増し、説得力が高まるのだそうです。
① 声の芯
② 話し方の文末
(189ページより)
まず①ですが、これは「声を出せば自信があるように聞こえる」ということ。
文末以外はちょっと下を向いていたとしても、モジモジしていたとしても、最後だけ顔を上げ、声を出して話すことを心がける。そうすれば、相手のなかに信頼感が生まれ、説得力も高まるということです。
次に②。
「説得力」を出すためには、文章の終わりをしっかり低い音【ド】までしっかり下げることが重要だ。(中略)
例えば、ハイブランドの店員や、高級ホテルのフロントマンが「いらっしゃいませ」と迎えるとき、「ませ」をあげたり伸ばしたりするだろうか。
必ず「ませ」を低い音に着地させている。だからこそ、信頼感や高級感が出てくる。(217ページより)
「おはようございます」など、元気よく相手にいうべきときは、文末が高くなってもかまわないでしょう。ただし、なんらかの説得力を必要とする場面では、意識して文末は低い音にするべきだということです。(188ページより)
「声」と「話し方」を自分の武器にすることができれば、自分への信頼が“秒”で構築されることになるだろうと著者は述べています。他者からの信頼を勝ち取るためにも、そんな本書をぜひとも参考にしたいところです。
Source: 日本実業出版社