現役中学生の「稲垣来泉」が夢中になった「成瀬」を語る! 憧れの『成瀬は天下を取りにいく』著者と初対談が実現

対談・鼎談

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成瀬は天下を取りにいく

『成瀬は天下を取りにいく』

著者
宮島 未奈 [著]
出版社
新潮社
ジャンル
文学/日本文学、小説・物語
ISBN
9784103549512
発売日
2023/03/17
価格
1,705円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

稲垣来泉(モデル・俳優)×宮島未奈(作家)スペシャル対談

[文] 新潮社

「すごく鮮明に想像できて、ずっとにやにやしながら読んでいました(笑)。」

クルミ:私もそこがすごく好きです。この作品を書く上で意識したことってありますか?

宮島:楽しく明るい話にしよう!ということを決めていました。当時コロナ禍でちょっと暗い世の中だったので、暗いお話ではなく明るいお話にしようと。だから漫才のネタみたいな感じで、クスッと笑えるポイントを意識して入れていました。

クルミ:『成瀬は信じた道をいく』の「コンビーフはうまい」で、成瀬と同時に琵琶湖観光大使になった子と成瀬の掛け合いだったり、記者会見で成瀬の発言に記者たちが困った顔をしているんだろうなっていうシーンだったりは、すごく鮮明に想像できて、ずっとにやにやしながら読んでいました(笑)。

宮島:ああいう感じって取材を受ける側じゃないとわからないですよね。私も取材を受ける側になった時に、相手がちょっと「えっ」みたいな感じになることがあるじゃないですか。どうしよう変なこと言ったかな? みたいな。そういうのを彼女は分かるんだけど、成瀬は分からない。そこの対比は意識して書きました。

書くときには映像を思い浮かべてどこを書けば伝わるかを考える

クルミ:そもそも成瀬というキャラクターはどこで思いついたんですか?

宮島:特にモデルとかがいるわけじゃないんですけど、おもしろい、変わった子にしようと思ったんです。ただ、いくらでも変にはできるんですけど、そうすると共感が得られにくいですよね。なので本当にいそうだなっていうギリギリを攻めました。

クルミ:私はこの作品を読んでいて、全部のシーンでどういう場所にいて、何をしながら話しているかっていうのをすごく鮮明に想像できたのですが、この作品でそのような意識はされていましたか?

宮島:映像が浮かびやすいっていうのは、以前も言われたことがあって、実際私も映像を思い浮かべて書いているので、どこを書けば伝わるかなっていうのを考えるんですけれど、書き込みすぎても想像の余地がなくなってしまうので、それが皆さんに伝わっているっていうのは、やりたいことができているということなので、すごく嬉しいですね。稲垣さんの一番好きなキャラクターは成瀬ですか?

クルミ:はい。ええと、成瀬も好きなんですけど、成瀬のお父さんもけっこう好きです(笑)。

宮島:お父さんね。こんなお父さん、本当にいそうだなって思いながら書いてたんですよね。

クルミ:成瀬のお母さんがあまりにも普通に成瀬と話しているから、ちょっと取り残されちゃってる感とか、成瀬がYouTuberの人を連れてきちゃう時も否定できずに結局一緒にお茶飲んじゃったりするのとか、すごくおもしろくて、私の中でとても好きなキャラクターになりました。

宮島:あはははは、うん、うん。それは成瀬のお父さんうれしいと思いますよ(笑)。

「稲垣さんからは成瀬に対する熱い思いがすごく伝わってきました。」

クルミ:先ほど担当編集さんから、宮島さんは小説を書く時間をちゃんと決めて、ルーティンを作っていらっしゃると聞いたんですが、そうなんですか?

宮島:私は午前中に書くようにしていて、 9時から12時が書く時間です。編集者から午後にメールが来ることに多くて、9 時から12時は自分の時間になるので、その時間に書くようにしてます。

担当編集:編集者は寝坊しがちなので(笑)、昼ぐらいから動き出してメールが届くという、それを宮島さんがうまく朝方に執筆して午後からメール返して、というふうにしてくれています。ちなみにお話を聞いていて少し意外だったのですが、稲垣さん的に成瀬は“かわいい”に入るんですね。かっこいい方なのかなと思っていたんですけど、かわいいポイントがあるのでしょうか?

クルミ:そうですね。成瀬は自分を貫いた結果、まわりから避けられてしまうこともあるけど、それも自分の人生だから気にしない、みたいな強い部分がありながら、表情がコロコロ変わるシーンがあったりもして、そんなところがかわいいって思います。

宮島:この作品では成瀬派と島崎派がいるようで、2人の人気がすごいんです。もちろん両方好きっていう人もいるんですけど、稲垣さんからは成瀬に対する熱い思いがすごく伝わってきました。

クルミ:私夜眠る前に、毎日のように想像タイムが入るんですけど、最近成瀬が好きすぎて、その時間に“成瀬と同じ家に住むとしたらどんな感じなんだろう”と、1人で笑いながら寝ています(笑)。

宮島:あ〜、とってもいいですね(笑)。たしかに成瀬がいたらいいなと思う時があるよね。私も落ち込んだ時とか、成瀬に励ましてほしいなって思ったりします。成瀬だったら、こんな時どうするかなって考えたりもしますね。

クルミ:知りたいこととか、全部教えてくれそうな感じがします。

宮島:迷いを断ち切ってくれそうな感じがありますよね。ただそんな成瀬にも弱点があるっていうのが、この作品の肝で。自分の中でこれだけは守りたいもの、そういうのは誰にでもあるし、それが成瀬にとっては島崎だったんだろうなって思います。

クルミ:2人の友情すごくいいですよね。1巻の最後を読むまでは成瀬って何にも動じない人なのかなって思ってたんですけど、島崎がいなくなるとこんなに弱っちゃうんだっていうのと、2巻になると逆に島崎がちょっと嫉妬する感じがあったりもして、すごくいいなと思いました。

宮島:実は1巻を書いた時には続編を出すつもりはなくって、1巻の最後に成瀬がようやく語ったところで終わるつもりだったんですよ。なので続編を出すことになった時「どうしよう」と思って。2巻があるって分かってたら、島崎は引っ越さなかったのに…と(笑)。島崎がいないという条件でやるとすればと考えたときに、こういうお話にしました。3巻、4巻と続けていくうちに、また「ああしてればよかった」っていうのが絶対出てくると思うんですけどね。

クルミ:続編、あるんですか?

宮島:3巻は出ます! 3巻は出ますけど、4巻まではちょっと間を空けようかなと思っています。

クルミ:やった! 読みたいです!

宮島:成瀬ファンの皆さんってすごく続編を楽しみにしてくれているので、私は一生書き続けるのかなって(笑)。だから長い目で見て、疲れないように少しずつやっていこうと思っています。

クルミ:3巻も楽しみです! 最後に宮島さんから中学生に向けてメッセージをお願いできますか?

宮島:これを読んでいる中学生の皆さんに伝えたいのは、夢は意外と叶うってことです。私は中学生の時から小説家になりたいと思っていて、それが40歳で叶いました。夢は意外と叶うので、希望を持って進んでほしいです。すぐに叶わなくても、時間が経ってから叶うこともあるので、やっぱり夢を持ち続けることが大事なのかな、と思います。

クルミ:ありがとうございます。今日はとても楽しかったです。

宮島:いえいえ、こちらも楽しかったです! ありがとうございました。

***
稲垣来泉(いながき・くるみ)
2011年1月5日生まれ、中学2年生。千葉県出身。研音所属。NHK朝ドラ「ちむどんどん」や映画「そして、バトンは渡された」等、立て続けに話題作に出演。人気子役から演技派俳優へと成長するなか、2024年4月より夢であったニコラモデルとして活動中。

宮島未奈(みやじま・みな)
1983年静岡県富士市生まれ。滋賀県大津市在住。京都大学文学部卒。2021年「ありがとう西武大津店」で第20回「女による女のためのR-18文学賞」大賞、読者賞、友近賞をトリプル受賞。2023年同作を含む『成瀬は天下を取りにいく』でデビュー。第11回「静岡書店大賞」小説部門大賞、第39回「坪田譲治文学賞」、第21回「本屋大賞」など15冠を獲得し話題となる。続編『成瀬は信じた道をいく』とあわせてシリーズ累計75万部を突破。

新潮社
2024年6月14日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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