『管理職が持つべき 決断力』
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【産経BooKs】『管理職が持つべき決断力』中原広著
[レビュアー] 産経新聞社
■元財務官僚が考察する先の大戦の「本当の教訓」
国家財政の中枢を長年歩んできた元財務官僚が、古今東西の戦史をひもときながら、企業幹部らの日々の課題解決に資するヒントを30のテーマに沿って提示した。
ビジネス本の定番ジャンルだが、特徴は先の大戦に紙幅を多く割いていることだ。とりわけ、防衛庁防衛研修所戦史室(当時)編纂(へんさん)の公刊戦史『戦史叢書』などを参照し、失敗から得られる教訓の解像度を高めている点にこだわりを感じる。
例えば、米国を仮想敵国としていた日本海軍の基本戦略「漸減邀撃(ぜんげんようげき)作戦」。日本に攻め寄せる米艦隊を潜水艦などで攻撃し、戦力を徐々に減らした上で、主力艦同士の決戦により勝利を狙うというものだ。潜水艦部隊の現場からは、敵の厳重警戒下での艦隊攻撃は困難との意見などが出て、方針が揺らいだ形跡もあるが、結局基調は変わらず、貴重な潜水艦が消耗を余儀なくされた。一度決まった経営方針や企画であっても、絶えず現場情報を吸い上げ柔軟に対応すべし-との教訓だ。このほか、優秀な人材を手放さないための慰留方法の具体的な指南などもあり、管理職にお薦めの一冊。(産経新聞出版・1760円)(つ)