『スマホアイ 眼科専門医が教える目と脳と体を守る方法』
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【毎日書評】見る機能が破壊される「スマホアイ」に注意!スマホの設定で予防するには?
[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)
「スマホを使いすぎると、目に悪い」という認識は、誰のなかにもきっとあるはず。視力が落ちるとか、目が疲れたり乾いたり、かすんだりすることは容易に想像でき、実際に経験している方も多いに違いないからです。
しかし、スマホの本当の怖さは別にあるのだと主張するのは、眼科専門医である『スマホアイ 眼科専門医が教える目と脳と体を守る方法』(松岡俊行 著、アスコム)の著者。たとえ視力検査の数字が悪くなかったとしても、「眼球運動が鈍くなる」「視野が狭まる」「内斜視の原因になる」「依存性を高める」などの悪影響が生じることがあるというのです。
そこで本書では、「スマホアイ」の恐ろしさと、スマホとの上手なつきあい方を眼科医としての知見から解説しているわけです。
「見る機能」が今、破壊されようとしています。
ただ視力が落ちるという話ではありません。
運動や勉強が苦手になったり、
コミュニケーションがうまくとれなくなったり、
場合によっては子どもの健全な成長が阻害されたりする危険があるのです。
その元凶が「スマホアイ」です。(「はじめに」より)
昔から、本やテレビ、あるいはゲームなど、あらゆるものが“目の敵”にされてきました。しかし最近、問題視されるのはもっぱら「スマホ」。なぜなら、こんなにも目の間近で小さな光る画面を凝視する生活は、過去になかったから。
しかも著者はクリニックで多くの患者さんと接するなかで、目の健康リスクに対する危機意識の低さを実感しているのだとか。だからこそ、本書が必要だという思いに至ったということのようです。
きょうは、第4章「『スマホアイ』は予防できる」に注目してみたいと思います。
目の疲れをスッキリ癒す簡単なルール
なんとなくスマホを見始めたら、いつの間にか1時間も経っていた――。そんなケースは決して珍しいものではありません。しかし問題は、そんな状況下で目と脳が大きく疲労しているという事実。自覚しづらいことではあるでしょうが、確実にダメージが蓄積されているわけです。
とはいえ、わかってはいても、急にスマホの使用時間を減らすのも難しいところ。そこで著者は目を疲労から守る簡単な対策として、米国眼科学会議が推奨しているという「20・20・20ルール」を勧めています。20分間スマホやパソコンを見たら、29秒間、20フィート(約6メートル)離れたところを眺めるだけの、シンプルな“休憩ルール”。
たった20秒間の休憩にそれほど意味があるのかと疑いたくもなりますが、イギリス・アストン大学のジェームズ・ウォルフソン教授をはじめとした研究チームが、眼精疲労のあるパソコン使用者に20・20・20ルールを実施してもらい、1週間後の変化を確認したところ、乾燥、ヒリヒリ感、不快感などの症状が軽減したそう。
視線の先にある対象との距離が近いほど、目の筋肉はピントを合わせるため懸命に働くことになります。にもかかわらず当の本人は、目や脳を酷使していることに気づきにくいもの。
そんな状態ではスマホアイや眼精疲労、近視の進行を防げないため、適当なところで時間を区切って遠くを見ることで、疲れた目を休ませるべきだということです。
20フィート(6メートル)という距離はあくまでも目安です。窓の外をぼーっと見るだけでかまいません。
ピント調節のために緊張したまま凝り固まりかけた筋肉が、調整の役目から解放されることで一気にリラックスできます。
その間、目から送られてくる情報の処理に追われていた脳も、ひと休みできます。(153ページより)
なお時間に関係なく、スマホを見終わったあとは必ず遠くを見る習慣をつけると、さらに効果的であるようです。(148ページより)
目を守るための、スマホの“ある設定”
スマホの画面に集中しているときは、ほとんどの人が自分の姿勢に無頓着になるもの。無意識のうちに、うつむいて猫背になり、画面を覗き込んでしまいがちなわけです。しかし当然ながら、目と画面の距離が近くなっているこの状態は目にとって非常に危険。
ある調査では、目とスマホの距離は平均で約20センチとされていました(野原尚美、他:携帯電話・スマートフォン使用時および書籍読書時における視距離の比較検討、あたらしい眼科:32:163-166、2015.)。
これでは明らかに近すぎです。スマホを見るときは、意識的に30センチ以上の距離を保ってください。
いまいち感覚がわからないかもしれませんが、たとえばA4用紙の縦の長さがだいたい30センチです。(159ページより)
また、ソファやベッドに寝転がってスマホを見るのも避けたいところ。寝ながらスマホを見ると、座っているときよりもさらにスマホと目との距離が近くなるからです。しかもスマホに近い側の目ばかりを使うことになるため、負担が偏ることにもなるそう。(158ページより)
自然に目を守ってくれる便利な設定
画面との距離をキープするために重要なのが、スマホの画面設定を変えること。ポイントは、文字の大きさと明るさです。
小さい文字を読もうとするとつい画面に近づいてしまうため、文字の表示はできるだけ大きく設定するべき。そして画面の明るさは、周囲の明るさに合わせるのがベスト。部屋が薄暗いのに画面が明るい場合も、部屋が明るいのに画面が暗い場合も、目は疲れやすくなるからです。また、画面のコントラストもあまり強くしないほうがいいようです。
また、「iOS17」「iPadOS17」以降のOS(スマホ向け基本ソフト)を搭載したiPhone、iPadでは、「画面との距離」という設定を使えます。
これは、画面と顔の距離が30センチ未満の状態で使用を続けていると、「iPhoneが近すぎる可能性があります」という警告が画面いっぱいに表示されて、使えない状態にしてしまう機能です。(162ページより)
設定方法は、「設定」→「スクリーンタイム」→「画面との距離」と簡単。いきなり警告が出ると最初は抵抗を感じるかもしれませんが、そのくらい強制的な仕組みがないと、画面との距離を保つのは難しいということ。そのためイライラせず、「自分の目を守ってくれている」と思って使うべきだといいます。(160ページより)
スマホを使わない生活は、現実問題としてもはや不可能。ただし、使い方に気をつければ、目にかかる負担を大きく減らせるのも事実。そこでぜひとも本書を通じ、「スマホアイを防ぐ方法」を身につけたいところです。
Source: アスコム