どんな相手からも「ここだけの話」を聞き出すとっておきの技術

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できる人だけが知っている 「ここだけの話」を聞く技術

『できる人だけが知っている 「ここだけの話」を聞く技術』

著者
井手隊長 [著]
出版社
秀和システム
ジャンル
社会科学/社会科学総記
ISBN
9784798071879
発売日
2024/05/08
価格
1,650円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

【毎日書評】どんな相手からも「ここだけの話」を聞き出すとっておきの技術

「ここだけの話」を聞く技術を持っていれば、どんな職種の人であったとしても長く生きていくことができる。なぜなら情報の価値がどんどん高まっていく時代のなかで、ほかの人たちが知り得ない情報を握れる力はきわめて重要だから。

できる人だけが知っている 「ここだけの話」を聞く技術』(井手隊長 著、秀和システム)の著者はそう断言しています。ラーメンライターとして、何百人ものラーメン店主や経営者などと接してきた人物。本の要約サービス「flier(フライヤー)」執行役員でもあり、つまりは寡黙なラーメン店主、多弁なビジネス書の著者と、正反対の個性の持ち主たちと向き合ってきたわけです。

しかも取材の時間は限られているため、単に話を聞くだけではなく、「聞き倒す」技術や姿勢が必要。それが、「ここだけの話」へとつながっていくということです。

「ここだけの話」とは、言い換えればほかでは聞くことのできない「オイシイ話」です。こういった話は、しゃべった側も気分がいいものです。

人間は誰もが、どこかで「自分の話を聞いてほしい」という欲求を持っています。ただ、全員が全員、話し方のプロではないので、その表現方法はさまざまです。

そんな中、聞き手の技術によって、長い時間しゃべり続けるのではなく、短い時間で「ここだけの話」を語れることで、満足度が高まることは言うまでもありません。(「まえがき」より)

したがって、それができる聞き手が重宝するのはむしろ当然。もちろんライターに限った話でもなく、営業でも接客業でも、そんな技術を身につけることができれば「〇〇さんをお願いします」と指名してもらえるようになり、二度目以降のオファーにつながっていくわけです。

だからこそ「ここだけの話」を聞く技術を身につけるべきだという考え方に基づく本書のなかから、きょうは第4章「これからは聞く技術より『聞き倒す技術』を磨け」に焦点を当ててみたいと思います。

「聞き倒す」ためにはアウトラインが必要だ

「聞き倒す」とっても、それは“徹底的に質問をぶつける”ということではないようです。もちろん、ほかにない独自の質問を考えることは大切ですが、だからといって闇雲に質問をぶつければいいというものではないのです。

インタビューを最終的な記事の形に落とし込んだときに、どれだけ深みのある内容になっているか、ほかにないものを生み出しているかが大事なのです。

このとき大事になってくるのは、質問の数でもインタビューの時間の長さでもなく、事前に作る構成、アウトラインです。(151ページより)

つまり、事前に頭のなかで相手をインタビューし、“なんとなくのアウトライン”をつくっておくということ。ちなみに、そのアウトラインどおりに取材を進められれば完成となりますが、現実的には想定からのズレも魅力になるもの。いずれにしてもアウトラインを要しておけば慌てることもなくなるため、落ち着いて話を聞くことができるわけです。

なお、著者がラーメン店主にインタビューする際に心がけているという基本的なアウトラインは、以下のとおりだそう。

① 幼少期の話

② ラーメンにハマったきっかけ

③ いつからラーメン屋を志したか

④ オープンまでの道のり

⑤ オープン日にあった出来事

⑥ ブレイクしたきっかけ

⑦ 今後について

(152〜153ページより)

さらにはこの7点のなかで優先順位をつけ、優先度の高い質問だけは確実に押さえるようにしているのだとか。そうすれば取材がとっ散らかることもなく、落ち着いて内容を深めていくことができるわけです。

ただし忘れるべきでないのは、アウトラインは「聞き倒すための手段」でしかないということ。アウトラインがあるとそこに固執してしまいがちですが、アウトラインからズレたときにおもしろみが生まれるのも事実。そこを深掘りしていけば、ポテンシャルはさらに大きくなっていくのです。(151ページより)

自分の仮説にこだわったり、決めつけたりしない

取材をしているとき、「これをしてはよくないな」と思うことのひとつが「決めつける」ことだといいます。いいかえれば、自分で立てた仮説どおりに取材を進めようとしてはいけないということ。仮説はあくまで仮説でしかなく、真実は目の前にあるものだからです。

仮説を押しつけることは、結論を決めつけてしまうことにもつながります。

そうではなく、あくまで仮説とズレることを楽しみながら取材していきましょう。仮説とズレてこそ、本当の魅力が出てきます。(166ページより)

具体的には、誘導尋問のような聞き方は避けるべき。

「創業当時はお客さんが来なくて苦労したんじゃないですか?」

「なかなか味が決まらなくて苦労したんじゃないですか?」

「昔からよく来てくれている常連さんこそいちばん大事ですよね?」

(167ページより)

こういった“結論ありき”の聞き方をしてしまうと、取材慣れしてない人であればなおさら「じつはそうなのかな」と感じてしまうもの。そのため、意図せず真実を曲げてしまう危険性が生じるのです。

そうではなく、相手に話してもらうのです。あくまで、こちらは軽いトスを上げるだけで、結論を誘導してはいけません。

これは結構、大事な話で、記事などを書く場合、記事に嘘を書くことにもなりかねませんので、本当に注意しましょう。

聞き手は、出しゃばってはいけないのです。(167ページより)

仮説は、あくまで適切な質問を投げかけるための目安であり、むしろ仮説からズレることのほうが自然。これこそまさに、営業などの仕事にも当てはまることだといえるでしょう。(166ページより)

繰り返しになりますが、人からなにかを聞いて、それを自分の成果に反映させることは、どんな職種の人にとっても重要。そこで、「ここだけの話」を聞き出せるようになるため、本書を参考にしてみてはいかがでしょうか?

Source: 秀和システム

メディアジーン lifehacker
2024年5月17日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

メディアジーン

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