『SNSのモヤモヤとの上手なつきあい方』
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【毎日書評】業務時間外や休日に上司からLINEがきたらどうする?
[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)
『SNSのモヤモヤとの上手なつきあい方』(Poche著、あさ出版)の著者は、人間関係や親子問題を専門とする心理カウンセラー。毎日たくさんの人が訪れるそうですが、とくにここ数年はSNSについての相談が多くなったと感じているのだとか。
SNSを利用していると、たしかにストレスを感じることは少なくありません。たとえば、「自分がなにかしてしまったのかな」と不安になったり、仕事での対応に迷ったり、誰かに嫉妬したり、世の中に対してモヤモヤしたり――。
けれども、そういう思いを抱えている方には、伝えたいことがあるのだそうです。
それは、今、感じているモヤモヤはあなたのせいではないということです。いじめのシーンをイメージしてみてください。いじめで悩むのは、加害者ではなく被害者ですよね。いじめている側は、「なぜ私はいじめてしまうのだろう」とは悩みません。
自分が悪いことをしていると自覚していないので、堂々とふるまいます。相手があまりに堂々としているので、「自分が悪いのでは」「我慢するしかない」「自分が変わらなくてはいけないのでは」と、思い込まされてしまうこともあります。(「はじめに」より)
つまりSNSでも同じように、「本当は悩まなくていい人たちが、悩まされてしまう」という現象が起こっているということ。本当はそのままでいい人たちや、なにも悪くない人たちが、モヤモヤを抱えて悩み苦しんでいるわけです。
そこで、「なぜモヤモヤするのか」「モヤモヤしたらどうすればいいのか」をテーマごとにまとめ、対処法を明らかにしたのが本書。きょうは第2章「仕事・職場に関するSNSのモヤモヤ」のなかから、2つをピックアップしてみましょう。
業務時間外や休日にはどう対応すればいい?
業務時間外や休日に、上司からLINEで業務指示が来ます。(64ページより)
業務時間外に、上司からLINEで業務指示が届くことに悩んでいる方は少なくないはず。誰かに相談したら「気にしすぎ」「仕事の意識が低い」などといわれることもあるかもしれませんが、本人にとってみればとても深刻。少なくとも気が休まらず精神的な負担になってしまうのであれば、「気にしすぎ」と片づけられる問題ではないでしょう。
著者によれば、上司から業務時間外の連絡が届いた際の対処法はおもに2つ。
1:通知をオフにしてメッセージを見ないようにする
業務時間外や休日は、返信しないと自分のなかで決めてしまうという方法。無視するのは怖いかもしれませんが、最低でも3回は無視を貫いてみるべきだといいます。心理学的にみても、たった1回だけ行動するよりも、3回続けて行動したほうが効果が出やすいことがわかっているのだそうです。
2:「いまから予定があるので、できません」とはっきり断る
上司も人間なので、無意識のうちに「自分に逆らわない人」「自分を攻撃してこない人」「自分の要求を聞いてくれる人」を選んで連絡してくるのだと著者は指摘しています。
つまり業務外の連絡がくるということは、「連絡してもいい」と上司から判断されているということ。そこで、(もちろん状況次第ではありますが)はっきり断ることも重要だというわけです。
「無視したり断ったりできれば、こんなに苦労していない!」と思う人もいるかもしれませんが、この2つは、そんな人にこそ試してみてほしい方法です。
このように思うのは、これまで上司の指示を我慢して受け入れてきた人だからです。この状況から抜け出すためには、連絡をしやすい人から「連絡をしにくい人」に変わるしかありません。(68ページより)
業務時間外や休日は、心と体を休めるために必要な「自分のための時間」。つまり退勤後や休日に、上司からの要求を断るのは必ずしも悪いことではないわけです。したがって、無視したり断ったりすることは、いまの自分に必要なのだと思ってみてほしいと著者は述べています。(64ページより)
取引先からLINEの交換を求められたら?
取引先からLINEの交換を求められたら教えなければいけないでしょうか?(94ページより)
ときには取引先の人から、LINEの交換を求められることがあるのではないでしょうか? しかし、仕事専用のスマホが支給されているのならまだしも、「プライベートで使っているスマホでLINEを交換するのは気が引けるな」と感じることだってあるはず。では、どうしたらいいのでしょうか?
この状況であなたが優先すべきは、自分の本音です。
教えなくてはいけないのかと悩むなら、「この人にLINEを教えたくない」というのがあなたの本音です。親しくなりたいような素敵な相手なら、悩むどころか「やった!」と嬉しくなるはずです。(95ページより)
相手が苦手なタイプだったり、対応が面倒だと感じたりすることもあるでしょうし、そもそも「プライベートと仕事を分けたい」という方もいらっしゃるかもしれません。しかし、教えたくない理由がなんであれ、「教えたくない」と感じるのであれば、教えなくてもいいということ。
「仕事上のやりとりをしたいだけなのに」と取引先から不満をいわれるかもしれませんが、プライベート用のスマホでLINEの交換をしてしまうと業務時間外にも連絡されかねません。場合によっては土日祝日関係なく、仕事の連絡やプライベートなメッセージが送られてくる可能性も。
そのため、相手への罪悪感や申し訳なさから断れないというような場合は、「仕事上のやりとりだからこそ、(メールなど)普段業務で使っているツールでやりとりしたほうがいい」と考えてみるべき。
仕事上の相手だからこそ、プライベートなLINEの交換は断ってもいいのだと、自分の決断を信じてください。(97ページより)
断るのは気が引けるかもしれませんが、「あとで大変な思いをするよりもいい」と自分を説得してみるべきだということです。(94ページより)
他人を変えるのは難しいけれど、だからといって自分が変わらなければいけないというわけではありません。自分の人生の主役は自分だからこそ、少しでもよい状況に自分を導いていくべき。そのためのメソッドとして、本書は大きく役立ってくれるはずです。
Source: あさ出版