『あいにくあんたのためじゃない』
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商店街のマダムショップは何故潰れないのか? 実体験をベースに小説を描いた柚木麻子がラップユニット・chelmicoと語る
[文] 新潮社
貼られたラベルは、もうたくさん!
柚木麻子さん
柚木:落語にラーメン、これってどちらも男の人の文化というか、男社会の中にあると思います。RRRで合わせるわけじゃないんだけど、ラップもそうじゃないかな? ラップはまだやったことがないけど、落語とラーメンに触れて、威張ってる男の人の気持ちがちょっとわかるようになったんです。女の私の中にもマッチョイズムがあったんですよ。
M:男のRRRだ(笑)。ラップもそういう側面はあるかもしれません。私たちも活動当初は女だからって舐められるような雰囲気がありました。だから今回の作品集に込められた「他人に貼られたラベルはもうたくさん! 自分で自分を取り返せ!!」というメッセージがすごく刺さったんです。
R:最初は結構貼られたもんね。
M:どこのライブでも「フィーメールラッパー二人組」という扱いで、そもそも歌詞を書いていると思われなかったり、対等に見てもらえていなかった。
柚木:それって同業者に? それともお客さんから?
R:どっちもかな。悪意はないんですけど、「今日のゲストはフィーメールラッパーです!」って必ず言われちゃう。
M:「フィーメールラッパーってわざわざ言う必要ある?」と最初は結構怒ってました。何度も同じラベルを貼られてしまうので、やんわり赤字で訂正したりして、抵抗してましたね。
柚木:今も状況は変わっていない?
R:だいぶ変わりました。まず女性のラッパーがすごく増えました。人数もだし、活躍する人も増えましたね。
M:環境が変わったこともありますが、他人にどう思われても別にいいかって思えるようにもなってきたんです。自分たちのラップのスタイルも確立できてきて、自信を持てるようになった。私は私だし、みなさんがどう捉えてくれてもいいですよって。
柚木:かっこいい!
R:ちょっとずつだけど、男性がするラップの中で性別に対してだったり、それこそラベルを貼るような言い方が減ってきているような気もします。
M:攻撃的なスタイルのラッパーでも、差別的な言葉は使わない。変わってきていますね。
柚木:二人は今どういうスタイルのラップを目指しているんですか? 明るくてポップなラップってよく言われている気がするけど。
M:ありのままでいたいです。確かにポップなイメージはあると思うけど、それだけではないんだぞという気持ちもあるし。でもそこを切り取ることで興味を持ってくれるなら、それでも全然OKです。ライブ見たら絶対イメージ変わるんで!
R:真面目にやってきたし、それが自信に繋がって、この10年でとても強くなれた。柚木さんの作品集は、そんな私たちを肯定してくれるような優しさと、頑張れって励ましてくれるような強さがありました。だから「めんや」では却って、登場人物が過去にSNSで顔を晒されて傷ついている描写に、ちょっと悲しくなっちゃったのかも。