仕事がうまくいかない、仕事がつらいとき…スッと心が軽くなる「シンプルな考え方」

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人にも自分にも振り回されない動じない心のつくり方

『人にも自分にも振り回されない動じない心のつくり方』

著者
枡野 俊明 [著]
出版社
SBクリエイティブ
ジャンル
社会科学/経営
ISBN
9784815625115
発売日
2024/03/01
価格
1,540円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

【毎日書評】仕事がうまくいかない、仕事がつらいとき…スッと心が軽くなる「シンプルな考え方」

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

どんなときにも、余裕を持っているように見える人がいるものです。トラブルが発生しても慌てず、商談がうまくいかなくても落ち込まず、時間に追われてもイラつかず、常に落ち着いていて、最後には結果を出してくるというような――。

人にも自分にも振り回されない 動じない心のつくり方』(枡野俊明 著、SBクリエイティブ)の著者によれば、そういう人は「動じない心」を持っているのだとか。ただし特別な能力が必要なわけではなく、動じない心は誰にでもつくれるそう。意志の強さも、性格も、才能も必要ないというのです。

「動じない心」をつくるたった一つの方法、それは、物事をシンプルに考えることです。悩みを抱えたり、周りの影響を受けたりするのは、多くのことを同時に考えすぎているからです。

例えば、商談が上手くいかないと落ち込むのはどうしてでしょう。周り方の評価が下がるから? それとも、自分の能力が発揮できなかったからでしょうか。できなかった自分への怒りもあるかもしれませんね。

「動じない心」を持つ人は、そのようなことは考えません。

彼らは、今やるべきことだけを考えています。目の前にある仕事を積み重ねていけば、最後には本当の成功にたどり着くと信じているのです。(「まえがき」より)

とはいえ頭でわかっていても、それはなかなか実行できないことでもあります。気がつけば余計なことを考えてしまっていたり、「シンプルに考えるとは、どういうことか?」と考えすぎてしまったりするものだから。

そこで著者は、そういう方に向けて本書を執筆したのだといいます。特徴的なのは、「働き盛りの方々が日々抱えやすい問題に答える」というQ&A形式をとっている点。そのため、読者は無理なく読み進めることができるわけです。

とはいえ、ここに示されているのは、あくまでひとつの答えにすぎないようです。著者の基盤となっている禅の教えは、答えをはっきり示すものではないからです。しかし読者にとっては、自分なりの答えを探すきっかけになるはず。

そんな本書の第2章「仕事を考える いつも『いい働き』ができるために」のなかから、2つの悩みと答えを抜き出してみましょう。

Q:仕事で能力が発揮できません

A:目の前のことに全力で取り組む

人間は誰もが、純粋無垢な心をもって生まれてきます。仏教の世界にも、「汚れのない状態で、心に仏様を持って生まれてくる」という考え方があるのだそうです。それは、他人の目を気にすることなく、自分の心に正直に生きているということ。つまりは、本来の自分の姿であるわけです。

ところが大人になるにつれ、人は色眼鏡で他人を判断するようになりがちです。肩書を持った人に取り入ろうとしたり、劣っていると思う相手に対しては高飛車な態度をとったりする。常に損得勘定で関係性を築こうとしがちであるわけです。

そういう行動になるのは、自分よりまわりの評価ばかりを気にしているから。しかし、それは本来の自分らしくはなく、とても不自然なことでもあります。大切なのは、まわりの評価に流されず、本来の自分と向き合うことなのですから。

ただし、そうはいっても組織で仕事をしている限り、上司の評価を無視するわけにもいきません。「これこそ本来の私です」と主張したところで、認められなければどうにもなりません。では、どうすればいいのでしょう?

それは、いま目の前にある仕事に全力を尽くすことです。

いま自分がやっている仕事、その仕事がやりたいかやりたくないかは、関係がありません。向き不向きも関係ない。とにかく全力でそれに立ち向かうこと。

子どもの頃のように時間も忘れて夢中になる。結果なんて考えず、ただ目の前のことに集中する。その集中力が、あなたの能力を引き上げてくれるのです。(78〜79ページより)

本来の自分を見失ってはいけないと著者はいいます。自分に与えられた能力を過小評価するべきでないとも。さらに重要なのは、誰かとくらべることよりも、自分は唯一無二の存在であることを自覚すること。

すなわち生きるとは、自分自身を楽しむことだというわけです。(76ページより)

Q:仕事がつらくて仕方ありません

A:自分が主体となって仕事に取り組む

著者は僧侶である一方、若いころからデザインが好きだったのだといいます。とくに空間をデザインすることに興味を持ったため、趣味として取り組んでいたそう。しかし、そのうち自然と依頼が増えていき、ある時期から職業として取り組むようになったのだそうです(現在は曹洞宗徳雄山建功寺住職であると同時に、庭園デザイナー、多摩美術大学名誉教授という肩書きもお持ちです)。

とはいえ当然ながら、住職の仕事もおろそかにするわけにはいかないでしょう。事実、深夜までデザインの仕事をすることも多いようですが、どれだけ遅くに寝ても、必ず朝の5時には起きて朝のお勤めをしているのだといいます。なぜならそれは、僧侶として欠かすことのできないものだから。

あまり忙しいので、よく身体がもちますねと、いつも言われます。

なぜそんな生活ができるのか。それは、私がデザインも僧侶としてのお勤めも、主体的にやっているからです。

もしもどちらか一方でも「やらされている」と感じたとしたら、その瞬間に投げ出しているでしょう。(85ページより)

そのとおりで、仕事は「やらされている」と感じれば、すぐにつらくなるもの。実際に「上司の命令だから」「締め切りがあるから」やっているとしても、どうせやらなくてはいけないなら、自分自身が主体となって取り組むべきなのです。そうすれば、仕事というものはどんどんおもしろくなっていくのです。

自分自身が主体となって生きる。それが禅の考え方です。すべての人間は、自分自身が主人公。他人の人生を生きているのではなく、みんな自分の人生を生きているのです。このことを常に忘れてはいけません。(86ページより)

他人の人生と比較したところでなにも生まれませんし、自分の人生の主役は、ほかならの自分自身だからです。(84ページより)

すべての禅語や問答は、人生のヒントとなる多くの知恵を示しているもの。ただし結局は、そのヒントのなかから自らが学び、気づき、活かしていくしかないのだといいます。自分なりの答えを見つけ出すためにも、本書を参考にしたいものです。

Source: SBクリエイティブ

メディアジーン lifehacker
2024年4月9日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

メディアジーン

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