『不可能を可能にする イーロン・マスクの名言』
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【毎日書評】イーロン・マスクのことばから誰でも「夢を実現する方法」は学べる!
[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)
ツイッター(現X)の買収騒動などで話題を呼んだイーロン・マスクは、マスコミの報道などにおいて「ちょっと変わった人」として取り上げられることが少なくありません。
もちろん、それも間違ってはいないのかもしれませんが、とはいえただの変人ではないのも事実。
世界一の大富豪であり、テスラによって電気自動車の時代を切り開き、ロケット開発を推進するスペースXの創業者であり、他にもいくつもの会社を経営。「ChatGPT」で知られるOpen AIという会社の創立にも関わった、現代を代表する経営者でもあるわけです。
『不可能を可能にする イーロン・マスクの名言』(桑原晃弥 著、ぱる出版)は、そんなマスクが残した名言のなかから、「不可能を可能にする」ための手段を見つけ出そうという意図に基づいて書かれたもの。「そんなの無理だ」と思われそうですが、決してそうともいい切れないようです。
マスクがやっていることは桁外れのものですが、最初からそれができたわけではありません。自分の得意なIT関連でスタートしながら徐々に力を蓄え、才能を磨き、資金を蓄えることで「世界を救う」ためのビジネスに関わるようになり、今日に至っています。
今の成果だけを見れば、「マスクは特別だから」「そんなのできっこない」と思いがちですが、そこに至る過程や仕事のやり方、考え方を知ることは、たいていの人が「それは不可能だ」と持っていることを「可能にする」道を知ることにもつながります。(「はじめに」より)
つまりマスクの仕事術を知ることは、「自分のビジョンや夢を実現したい」「いつかは大きなことをしたい」という野心を持っている方にとっても参考になるはずだということ。
したがって、「マスクは特別だから」という理由で、せっかく活用できる「マスクの仕事術」を知らずに生きるのはもったいないと著者はいうのです。たしかにいまは夢を持ちにくい時代かもしれませんが、マスクについて知れば、夢に近づく方法を学ぶことができるからです。
第2章「失敗を恐れることなく信じる道を行く」のなかから、2つのトピックスを抜き出してみましょう。
想像力が限界を決めてしまう
どんなものにもためらってはいけません。
想像力が限界を決めてしまいます。
「セレブたちの卒業式スピーチ」(69ページより)
IT企業の創業者にSF小説好きが多いことはよく知られますが、それはマスクも一緒。子どものころからたくさんの本を読み、そこで展開される宇宙の旅や、登場するスーパーヒーローに憧れていたわけです。
とくにお気に入りは、アイザック・アシモフの『ファウンデーション』シリーズと『銀河ヒッチハイク・ガイド』で、これらについてこう振り返っているそうです。
「スペースXを作った背景には、『ファウンデーション』シリーズと第0条があります」
「『銀河ヒッチハイク・ガイド』に出会ったおかげで、存在の危機から抜け出すことができました。このお話、いろいろと微妙におかしく、とてもおもしろいんですよ」(70ページより)
この発言が証明しているのは、想像と科学はいつでもお互いに刺激し合いながら発達していくものだということ。途方もないことを想像し、それを口にして、実現に向け集中して努力するのがマスクのやり方なのです。
そんなマスクは、カリフォルニア工科大学の卒業式スピーチでこう語りかけたといいます。
「どんなものにもためらってはいけません。(皆さんの)想像力が、限界を決めてしまいます。世界へ出て行き、魔法をつくり出してください。」(71ページより)
多くの人は、なにかを夢見たとしても「でも、できるわけないな」とやる前から諦めてしまうもの。そんなことが続けば、やがて想像することや、夢見ることすらやめてしまうわけです。しかしマスクは、「自分で自分の発想を制限してはいけない」と説いているのです。
すごいものを「創造」するためには、最初から制限をかけるのではなく、目いっぱい「想像の翼」を広げることが大切だということです。(69ページより)
成功が続くと失われるもの
成功が続くと、
リスクを取る気概が失われる
「イーロン・マスク」下(69ページより)
どんな企業も少人数からスタートし、素晴らしいアイデアや製品、サービスをつくることで成長していくものです。
しかし、スティーブ・ジョブズが残した「企業というのは成長して大きくなると夢やロマンが失われる」ということばにも明らかなとおり、成功が続いて大企業と呼ばれるようになると、リスクを恐れるあまり夢やロマンが失われ、イノベーションを起こせなくなりがちでもあります。
マスクがつくり上げた格好いい電気自動車に比べ、大手自動車会社がつくる電気自動車は初期の段階ではあまりに格好悪かったわけですが、その原因は「大企業が歴史や文化に縛られ過ぎたからでは」というのがマスクの分析です。
テスラもそうですが、マスクはスペースXでもあまりの規制の多さに辟易しています。リスクを嫌い冒険をしなかった大企業同様に、規制当局もリスクを好まず、あらゆることに規制を掛けようとします。マスクは言います。
「文明はこうして衰えていくんだな。リスクを取らなくなる。そして、リスクを取らなくなると、動脈硬化が起きるんだ。審判がどんどん増え、プレイヤーはどんどん減っていく。」(73〜74ページより)
マスクはテスラやスペースXをそんな大企業にしないために、常にリスクを取る覚悟を示しているのです。成功してもなおリスクを取ること、それが、イノベーションを起こし続ける企業にとってなにより大切なことなのでしょう。(72ページより)
本書のなかに「なるほど」「これはいい」と思える考え方や行動を見つけたら、すぐに実行してみるべきだと著者はいいます。そうすれば、マスクのように夢に近づけるかもしれないからです。少なくとも、試してみる価値はあるのではないでしょうか?
Source: ぱる出版