10年後になくなる仕事、生き残る仕事…どんな人なら必要とされるのか?

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10年後のハローワーク これからなくなる仕事、残る仕事、なくなっても残る人

『10年後のハローワーク これからなくなる仕事、残る仕事、なくなっても残る人』

著者
川村秀憲 [著]
出版社
アスコム
ジャンル
社会科学/社会科学総記
ISBN
9784776213352
発売日
2024/03/28
価格
1,650円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

【毎日書評】10年後になくなる仕事、生き残る仕事…どんな人なら必要とされるのか?

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

10年後のハローワーク これからなくなる仕事、伸びる仕事、なくなっても残る人』(川村秀憲 著、アスコム)の著者は人工知能研究者。北海道大学大学院情報科学研究院教授、博士(工学)として長年にわたり、ディープラーニング、ニューラルネットワークなど、人工知能(AI)の研究を続けているのだそうです。

そのような立場から、2023年はAIにとって大きな、そして象徴的な転換点になったと感じているのだとか。ChatGPTに代表される生成AIの急速な浸透に明らかなとおり、「AIになにができるか」という実用性が、世界中の人々にわかりやすいかたちで姿を現したということです。

しかしAIが大きな変化をもたらした一方、日本には少子高齢化の問題もが押し寄せています。将来的にAIの進歩と発展が人間の仕事を奪うだろうといわれていますが、人材不足がより顕著になっていく今後の日本ではこの先、否応なしにAIに置き換えなければならない仕事が増えていくだろうと予測されるわけです。

では、実際に10年後にはどんな仕事がなくなり、どんな仕事が生き残るのでしょうか? そして、どんな仕事が生まれてくるのでしょうか? この問いに対して著者は、「仕事は『意思決定』と『作業』に分解され、このうち『作業』に関しては、相当部分がAIに取って代わられる」と答えています。

違う言葉で言い換えるならば、

「自分で何をするか決める仕事」は残り、

「人から言われてやる仕事」は

AIに取って代わられる

とも言えると思います。(「プロローグ」より)

つまりはどんな業界、領域であれ、「自分で決めている人」になる必要があるということ。そうなるために考えるべき2つの考え方を、第3章「10年後も必要とされる人になる思考の深め方」のなかから抜き出してみましょう。

「若いころの苦労は買え」といわれても買うな

AIの普及は、人の流れも変えていくだろうと著者は予測しています。具体的には、若い人たちの「下積み時代」は不要になり、または維持できなくなるというのです。

高度成長期以降の社会は、新卒の一括大量採用と、年功序列での終身雇用制でした。そんななか新入社員は最初の数年間、即戦力ではなく、将来の戦力を見据えた「教育」を受けながら給料を得ていたわけです。

しかしAIの普及に伴ってアシスタントは不要になり、必要なのは決定をする人だけという状況に。AIを操る少数のスタッフ以外はこの先採用しなくてもよくなったとしたら、かつての「下積み時代」もまた不要になっていくことでしょう。

採用において問われるのは、おもに支払う報酬と得られる利益のバランスとなります。つまり「何ができるのか」だけがテーマになるため、企業において「教育を受ける/受けさせる」必要がなくなるわけです。(115ページより)

今後はすべての「下積み時代」がなくなり、その先の年功序列、終身雇用制も成立しなくなるということ。そのため、よほどの例外を除けばわざわざ“まっさらな新入社員”を「採用」するリスクを負う必要もなくなというのです。

企業は、その分の予算を研究に投資したり、小さな企業の事業を経営者ごと買収するような動きを強めるかもしれません。ただし著者はそれを、ポジティブにとらえるべきだと述べています。

かつての日本企業では、「若いころの苦労は勝手でもせよ」「三日・三月・三年を乗り切れ」ということばが声高に語られてきました。しかし、いまの時代においてそれらは「下積み時代」を正当化するためのスローガンとも受け取れるのです。

これからはもう「下積み時代」を経験することはなくなり、「下積み時代」に縛られることもありません。誰も知らないことを学び、誰にもできない価値を生める人が、高い対価、高い年棒で評価されるだけになります。(117ページより)

こうした考え方に基づいて備えをしておくことが、10年後の自分の居場所を確保することにつながるということ。(114ページより)

「成功する変人」を目指せ

現時点での結論として著者が考える“AI時代を生き抜き、これから成功していける人物像”は、ずばり「変人」だそう。

自分の好きなことを突き詰められる人。好きな気持ちを継続できる人。もしもその

内容が、今後、世間の求めているものに合致しているのだとしたら、「大成功する変人」になれるかもしれません。(247ページより)

嫌な思いをしていわれた作業をこなし、時間と引き換えに給料を受け取るような働き方は、遅かれ早かれなくなるということ。そのあとで「時代の犠牲になった」「マトリックスの養分になった」と考えるか、「嫌な思いをしてまで働かなくていい時代が来た」「行きたい人生を求めてもいい時代が来た、しかもマイナーな内容ほどチャンスがある」と考えるかの違いだけで、これからの人生は大きく変わってくるというのです。

戦後の日本が復興する過程においては、たくさんのルールや常識がつくられ、人々はその範疇で生きるようになりました。はみ出すことが得策ではなく、同じ競争科目のなかで高得点、高パフォーマンスを出すことをみんなが目指してきたわけです。

しかし農業や工場が自動化され、携帯電話やパソコンが生まれ、インターネットやスマホが普及するなど、世の中は急速に変わっていきました。そしてそれに次ぐAIの登場と発展は、これまでのすべての変化を凌駕するインパクトを持っています。だからこそ、著者は次のように主張するのです。

戦争直後のように、食うに困る、ということはないにせよ、私たちは「焼け野原に放り出された」というくらいの心構えでいて、思いきって「変人」になってしまうくらいがちょうどいいのではないかと思います。(248ページより)

なぜなら、誰もが自由に“したいこと”を追いかけている社会のほうが、全体としては人間の英知を最大化できるはずだから。そういう意味でも、いままで人力でやっていた仕事(作業)は、AIに任せてしまったほうがいいということ。それは「恐るべき時代」ではなく、「楽しい未来」に向けた考え方なのだということです。(247ページより)

この先、AIが重要な社会インフラとしてどれだけ普及していったとしても、「AIをどう使うか」「AIになにをさせるか」は使う側である人間の判断に委ねられます。

だからこそ、少子高齢化のような問題を解決しつつ、やりたくない仕事を代わりになってもらうようなかたちで、AIを「いいとこ取り」していけばいい。そうした考え方に基づく本書は、これからの時代を生きていくうえでの重要な指針となってくれることでしょう。

Source: アスコム

メディアジーン lifehacker
2024年4月4日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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