人の話は「聞きっぱなし」が大正解!どんなアドバイスもいらない

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プロカウンセラーの こころの声を聞く技術 聞いてもらう技術

『プロカウンセラーの こころの声を聞く技術 聞いてもらう技術』

著者
諸富祥彦 [著]
出版社
SBクリエイティブ
ジャンル
社会科学/経営
ISBN
9784815622688
発売日
2024/02/07
価格
990円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

【毎日書評】人の話は「聞きっぱなし」が大正解!どんなアドバイスもいらない

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

心のなかでは「わかってほしい」と思っていても、なかなかわかってもらえなかったり、話を聞いてもらえなかったり――。

多かれ少なかれ、そんな経験は誰にでもあるのではないでしょうか? しかし、満たされない思いが募っていくと、やがてフラストレーションを感じることになるかもしれません。その結果、ブチ切れてしまったりしたら、人間関係にも悪影響を与えてしまうでしょう。

事実、臨床心理士である『プロカウンセラーの こころの声を聞く技術 聞いてもらう技術』(諸富祥彦 著、SB新書)のもとにも、「わかってもらえない。聞いてもらえない」という「こころのつながりの不全」を感じている多くの方々がカウンセリングを受けに来るのだそうです。

そこで本書において著者は、そんな「こころのつながりの不全」を感じている方々のために、具体的な対処法を示しているのです。

「もっとしっかり、つながりたい」

「もっと話を聞いてほしい」

「わかってほしい」

そんな気持ちを叶えるための具体的な対処法を示した本です。

また同時に、周囲にいるほかの人が、その気持ちに応えるために、「もっとうまく話を聞ける人間になりたい」。「もっと気持ちをわかりたい」。そのためにはどうすればいいか、その技術を具体的に示した本です。

(「はじめに」より)

きょうは第1部「聞く技術とわかってもらう技術、その大原則」内の第1章「聞く技術【初級編】」のなかから、興味深いトピックを抜き出してみたいと思います。

「聞きっぱなしのまま」そのままにする

「聞く技術」というと複雑な技術が必要だと思われるかもしれませんが、著者によればそのための大原則はとてもシンプル。

「聞いたら、聞きっぱなしにする」「余計なことはいわない。そのままにする」。これこそが、なによりも大切な「聞く側の大原則」だというのです。

例えばこれは、アルコール依存の経験がある人がお互いに支えあう「セルフヘルプ・グループ」(自助グループ)など、さまざまな治療的グループなどでも採用されている「人の話を聞くときの大原則」です。

セルフヘルプ・グループとは、同じ悩みを抱えている人、かつて抱えていた人同士で支えあうグループです(断酒会のほかに、薬物依存の会、不登校の子どもの親の会、ひきこもりの親の会など、さまざまな会があります)。(21ページより)

こういった会では、参加者のひとりが自分の苦しかった体験やその後のプロセス、自分の感情を語ることになります。同じグループのメンバーは、心を込めてそれを聞きながら、ただそのまま「聞きっぱなし」にする。それが原則であるわけです。

「聞きっぱなしなんて冷たい」と思われるかもしれませんが、じつはそれがいちばん安全。ひとりのメンバーが思いを語っているときに他の誰かが「自分はこう思う」と割り込んだりすると、それまで語っていたメンバーは「なんだか聞いてもらえた気がしない」と感じてしまう可能性があるからです。

それどころか、ときには「傷ついた」ということになってしまうかもしれません。そこで、そういった事態を避けるためにも「聞きっぱなし」にするという原則が重要な意味を持つわけです。(20ページより)

アドバイスはしない

とはいえ話を聞いた場合には、ついついアドバイスをしたくなってしまうものでもあります。しかし、それは単に自分の満足感が得られないからにすぎないのだと著者は指摘しています。

もちろん自分からすれば、アドバイスをするのは「相手のため」を思ってのこと。しかし、話を聞いてもらっている側にとって、それらは多くの場合“余計なお世話”でもあるわけです。

だとすれば、アドバイスをすることで相手は「自分が否定された」「いまのままではダメだといわれた」「そのアドバイスを実行しないうちは不充分だといわれた」と感じることになるかもしれません。

しかしそれでは、お互いの時間が台なしになってしまいます。

職場の上司や学校の教師、親や一部の(古いタイプの)夫の悪い癖……それは、アドバイスしないと「仕事をした気持ちになれない」、アドバイスしないと「自分が相手に役立った満足感が得られない」ということです。(30ページより)

もちろんアドバイスした本人に悪気はなく、「相手のため」を思っているはず。しかし相手は、自分を否定されたような気持ちになってしまうことも考えられるのです。そういう意味で、「聞きっぱなし」にすることには大きな意義があるのでしょう。(28ページより)

軽いひとことで充分「そうか」「それは大変だね」

とはいえ、なにもいわないのは不自然だというケースもあることでしょう。

ただし、だからといって張り切りすぎるとリスクが生じる可能性もあるため、「張り切りすぎないこと」が重要だそう。

それには、ただ一言、

「そうか……そうなんだ」

「それは大変だね」

そう言えばいいのです。

相手が、つらい気持ちを話してくれたら、

「そうか……それはつらいね」

と相手の気持ちに寄り添う「一言」を添える。それだけでいいのです。すると、「実は、こんなことがあってね」と、さらに大切な話を続けてくれるかもしれません。(31ページより)

このようなときは話す側にも「よし、話してみよう」という思い切りが必要。また、「この人なら、こんな話をしてもわかってくれるかもしれない」という深い信頼があるから、大切な話もできるわけです。

だからこそ相手が自分に大切な話をしてくれたときには、「大切なことを話してくれてありがとう。それは、本当に大変だったね」と、シンプルなひとことを添えることも大切であるといいます。(30ページより)

本書には、「話を聞く技術」に関する一般的な書籍とは異なる特徴があります。

それは、「聞く側の技術」についてだけではなく、「わかってほしい人」「聞いてもらいたい人」が持つべき「わかってもらう技術」「聞いてもらう技術」にも言及している点。そのため、コミュニケーションについて悩む方にとっての実用性がより高まっているわけです。

Source: SB新書

メディアジーン lifehacker
2024年3月23日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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