『いつもの焦りやイライラがなくなるせっかちさんの本』
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【毎日書評】いつも焦っている、イライラしがち…せっかちな性格でも「ラクに生きるヒント」
[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)
タイトルからもわかるように、『いつもの焦りやイライラがなくなる せっかちさんの本』(杉浦義典 著、フォレスト出版)の著者は、せっかちな人のことを“せっかちさん”と呼んでいます。
せっかちさんは、周囲の人との関係においても感情が追い立てられがちで、「あの人にこう思われると嫌だから、ああしておこう」などと、無理をしてでも行動して、せかせかバタバタとよりせっかちになっていることも少なくありません。
そういった意味では、お互いを尊重する傾向が弱くなっている日本では、せっかちな人は増えているのかもしれません。(「はじめに」より)
もちろん、せっかちであること自体が悪いわけではないでしょう。しかし、ときにはせっかちさが人を傷つけてしまうこともあるかも。また、気づかないうちに自分自身を傷つけているということもないとはいい切れません。
けれども現実問題として考えれば、闇雲に急いで先を急いだところで、その先にバラ色の未来が待っているとは限らないことは明らか。だからこそ、「ちょっとゆっくり」前に進むときがあってもいい。異常心理学者である著者は、そう主張しています。
そして、そうした考え方を軸として、本書ではせっかちさんのいろいろなタイプとその気持ちを心理学の観点から検証。せっかちな心を癒し、楽な気持ちで生きるための方法を提案しているのです。
きょうは第3章「『形』から入ってじっくり取り組む」のなかから、気になるトピックスを抜き出してみましょう。
ヘヴィメタルがせっかちをなおすこともある
せっかちな性格をなおしたいというとき、「華道や茶道、書道など、心が落ち着きそうな習い事にでも通ってみようか」と考える方もいらっしゃるかもしれません。たしかに、それらはせっかちとは正反対で、落ち着いた嗜みのように感じられます。
その一方、ヘヴィメタルのような音楽やアクションゲームなどの趣味は、いかにもせっかちさを刺激しそうです。
ところが場合によっては、ヘヴィメタルやアクションゲームよりも、華道や茶道などのほうがせっかちを刺激する可能性があるのだとか。
華道や茶道、書道などを本格的に始めると、そこには守らなければならない細かな作法がたくさんあったり、厳しい師範がいたり、上達すればそれこそ競争の世界に身を置いたりすることになります。
せっかちを落ち着かせたいにもかかわらず、厳しい面が多い習い事を無理に始めたとしたら、逆に切迫性を刺激されることになり、結局せっかちさを煽られることにもなりかねません。(98ページより)
細かな作法や厳しさは心を落ち着かせてくれそうでもあるので、これは意外な考え方ではないでしょうか? では、心が落ち着くようなイメージではないヘヴィメタルについては?
もともと音楽が大好きで、「ヘヴィメタルをギターで弾けるようになりたい!」といった目標があったとします。
そうして、毎日少しずつ練習を積み重ねていくのであれば、それはせっかちを直していく方法の一つになり得ます。(99ページより)
つまりは好きなことを地道に続けていくことが、心を落ち着かせてくれるということなのでしょう。(98ページより)
なにごとも「じっくり」が肝心
とはいっても当然のことながら、「華道や茶道、書道がせっかちにはダメで、ヘヴィメタルやアクションゲームがいい」ということではありません。また、「ゆっくり」なことがよくて、「激しい」ことがダメというわけでもないようです。
「なにをやるか」ではなく、「じっくりやるか」ということが大切なのだと著者はいうのです。
ちなみに“取り組むなにか”を選択する際には、次のようなことを意識するといいそうです。
◎自分自身で選んで始められること
◎やっていて楽しいと思えること
◎上達したいと思うこと
◎取り組んでいて新しい発見を得られそうなこと
(100〜101ページより)
自分が楽しめることを日常のなかに取り入れれば、せっかち度合いを解消できるようになるということです。(100ページより)
自分らしさが見つかるまで気長に待つ
ただし、注意すべきこともあるようです。その際たるものは、「続けることや習慣にすること自体が苦痛になってしまう」というケース。「やらなきゃ」「がんばらなきゃ」といった感情に追い立てられることが、逆効果になってしまいかねないということです。
もうひとつは、ハマりすぎて生活に支障を与えてしまうこと。たとえばスマホゲームがいい例ですが、必要以上に課金してしまったりすると、「自分自身で選んで始める」「自分自身で上達したいと思える」という本来の意義からかけ離れてしまうわけです。
さらに、「やってしまったこと」に関しては悩まないことも大切。たしかに、やろうと思っていたことが三日坊主で終わってしまったりすると、ネガティブな感情に引っぱられてしまいがちです。でも、もし続かなかったのだとしたら、“続かなかったまま”でもいいというのです。
理由はシンプル。続かないことでネガティブになってしまうくらいなら、「自分にとっていいものが新しく見つかる」タイミングを気長に待ったほうがいいということです。(162ページより)
「せっかちになる心理を知りたい」「せっかちな気持ちを落ち着かせる方法を知りたい」など、自分の気になる章から読むことのできる実践的な一冊。いまより心を楽にするために、参考にしてみてはいかがでしょうか?
Source: フォレスト出版