『大ピンチずかん』
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『大ピンチずかん2』
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子どもも大人も楽しめる!絵本『大ピンチずかん』鈴木のりたけさんにインタビュー!
[文] 日本出版販売(日本出版販売)
『大ピンチずかん』が生まれたきっかけは“子どもの失敗”
――『大ピンチずかん』は当初から現在のような形の本にしようと決めていたのですか。
かなり、ぶれましたよ(笑)。僕が最初にこの本を作ろうと思ったきっかけは、『大ピンチずかん』の表紙にもなっていますが、うちの子どもが牛乳をこぼしてフリーズしてしまったことです。親は「とりあえず牛乳パックを立てたら」と思うけれども、子どもにとっては牛乳をこぼすことは、どうしたらいいのかわからなくなってしまう大惨事なのだなと。
そのあと牛乳パックを置いて、どう処理するかなと見ていたら、近くにあったティッシュを1枚取って、どくどくこぼれた牛乳の上にお布団をかけるように1枚載せていました。
「それじゃあ全然吸い取れないよね」と言うと、ティッシュから牛乳を床にボタボタたらしながらゴミ箱に捨てに行って、被害が広がっていく。その様子が、子どもは真剣なのでしょうがおもしろくて(笑)。
――日常の一コマから生まれた絵本なのですね。
とはいえ、ノーベル化学賞を受賞した田中耕一さんが、間違えて混ぜてしまった試料も「捨てるのはもったいない」とテストしたことで実験に成功したように、うまくいかないときにも機転を利かせたり、乗り越えようと意思の力を働かせたりして、失敗から物事が好転することもあります。だから失敗を恐れないで、前を向いて生きようよという、 当初は“いいお話”の本でした。
けれども、子どもの失敗ネタをたくさん集めて、図鑑みたいにした方がおもしろいのではないかと担当編集者と話をするうちに、「失敗をすることもあるよね」とピンチに慣れて、怖がらなくなる効果も出るといいかもしれないと考えました。そこから軌道修正をして、今の形になっています。
失敗も含めて経験することは人生の楽しみ
――お子さんが牛乳をこぼしてしまったとき、その様子を観察できる余裕は素敵ですね。つい「何やってるの!」と一緒に慌ててしまい、見守れなさそうですが……。
それについては教育論の話になってしまいますが、子育ては“待つ”や“忍耐”など親が試される場面が多いですよね。
「こうすればできるよ」と先に答えを提示してしまいそうになるけれど、それがたとえ良かれと思ってのことでも、それはもう彼らにとっての答えにはならないでしょう。自分の頭と手で見つけることに意味があるし、人から与えられた答えでは、少しでも条件が違ったら答えを出せなくなりかねません。
失敗も含めて経験することは人生の楽しみでもあるので、先回りしてしまうことは子どもたちの楽しみや生きている実感を奪うことにもなってしまいます。自分のことは自分で責任をとろうねという気持ちで構えています。
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後編【絵本作家・鈴木のりたけが語る「子どもに何より良い影響を与えること」とは?『大ピンチずかん』の楽しみ方も】で続きを読む
鈴木のりたけ
1975年、静岡県浜松市生まれ。グラフィックデザイナーを経て絵本作家となる。『ぼくのトイレ』(PHP研究所)で第17回日本絵本賞読者賞受賞。第2回やなせたかし文化賞受賞。『しごとば 東京スカイツリー』(ブロンズ新社)で第62回小学館児童出版文化賞受賞。『大ピンチずかん』(小学館)で、第13回リブロ絵本大賞、第15回 MOE絵本屋さん大賞2022 第1位など絵本賞8冠を達成。
ほかの作品に、「しごとば」シリーズ、『たべもんどう』「おでこはめえほん」シリーズ(ブロンズ新社)、『ぼくのおふろ』『す~べりだい』『ぶららんこ』『ぼくのがっこう』(PHP研究所)、『おしりをしりたい』『おつかいくん』(小学館)、『かわ』(幻冬舎)、『どんでもない』『なんでもない』(アリス館)、『うちゅうずし』(KADOKAWA)などがある。
千葉県在住。2男1女の父。