『猪木戦記 第1巻 若獅子編』
- 著者
- 流 智美 [著]
- 出版社
- ベースボール・マガジン社
- ジャンル
- 芸術・生活/体育・スポーツ
- ISBN
- 9784583116181
- 発売日
- 2023/06/05
- 価格
- 1,870円(税込)
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このエピソードだけでも元が取れた!「猪木『試合欠場』大チョンボ秘話」
[レビュアー] 吉田豪(プロ書評家、プロインタビュアー、ライター)
プロレス評論家・流智美によるアントニオ猪木3部作の第1弾がこれ。猪木が日本プロレスでデビュー後、22歳の若さで東京プロレスを旗揚げしたものの、たった3ヶ月で崩壊したのにはほとんど触れず、古巣・日プロに出戻ってジャイアント馬場の下のポジションにモヤモヤしながら闘っていた1967年~71年の若獅子時代についてのみ語る本である。
『週刊プロレス』の版元からのリリースだからデリケートな部分に踏み込むことなく、「戦記」を名乗るだけあってひたすら試合のことのみを語っていくので正直言って物足りなさは感じるんだが、このエピソードだけでも元が取れたのであった。
68年1月8日、広島県体育館でのインターナショナル・タッグ王座初防衛戦。馬場&猪木対クラッシャー・リソワスキー&ビル・ミラー戦で「猪木はなんと、『試合欠場』の大チョンボをやらかしてしまう」んだが、その裏には当時の『東スポ』猪木番・櫻井康雄情報によるとこんなことがあったようなのだ。
「7日が大阪府立の試合で、このあと猪木は新幹線の最終便で東京の野毛の自宅に戻ったんです。試合前に大阪から電話したときに、自宅にいたダイアナさん(注/アメリカで出会った最初の奥さん)が“今夜帰ってきてくれなければ、自殺する”みたいなことを口走ったらしい。一種のヒステリーですよ。確かダイアナさんと娘の文子ちゃんが、野毛に住み始めて間もない頃で、不安だったとは思います。しかし、8日の試合地は広島ですからね。交通機関の発達した今でも、前日に東京に戻ってしまうと、なかなか翌日夕方の広島に間に合わせるのは大変ですよ」
翌日は大雪で飛行機が飛ばず、試合に出られなかった猪木は日プロ幹部たちに土下座謝罪。「ここから1年くらいは、完全な“二番目のエース”に甘んじた感じですが、すべてはあの広島のチョンボが原因」だったそうなのである。遅刻ギザコワス!