『死神と天使の円舞曲』
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未来への警告 『死神と天使の円舞曲』著者新刊エッセイ 知念実希人
「来年度、『死神シリーズ』の新作をお願いできませんか?」
一昨年の打ち合わせで、そう編集者から依頼があったとき、「いいですよ」と即答した。
締切りまで一年以上あるし、まあ全然余裕だろう。そう思っていた。その翌年、私は一年前の自分にひたすら呪詛(じゅそ)を吐き続けるはめになった。
『死神シリーズ』は複数の短編で謎を解決していくうちに大きな謎が見えてくるという構成になっている。実は、私はこのタイプの作品を書くのが得意ではある。ただ、得意だからといって、楽に書けるというわけではない。
極めて複雑な構成となっているため、執筆前に精密なプロットを必要とする。それは巨大な建造物を、その基礎から設計するようなものだ。もの凄い労力を必要とするし、設計のミスで物語が根幹から崩壊する危険性すら孕(はら)んでいる。
そういえば、二作目の『黒猫の小夜曲(セレナーデ)』を書き終えたとき、「もう二度とこのシリーズは書かない」と誓ったんだった……。なんで忘れていたんだ……。
しかし、いくら過去の自分を呪ったところで、アイデアが出るわけでも締切りが延びるわけでもない。
というわけで、なんとか私はヘロヘロになりながら今回の『死神と天使の円舞曲(ワルツ)』を必死に書き上げた。幸いなことに、今作でも活躍するレオとクロはお気に入りのキャラクターだったので、彼らを書くこと自体は楽しかった(じゃなきゃ、途中で投げ出していたかもしれない)。
え? シリーズ四作目? 書きませんよ。ええ、絶対にもうこのシリーズの新作を書くという苦行はしません。
さて、来年以降の自分はこの誓いを覚えていられるのだろうか? いまからちょっと不安だ。
それはさておき、皆様ぜひレオとクロ、二匹の死神の活躍を楽しんで下さい。