故郷が突然「被災地」になった女性の日々の暮らしを描く漫画。福島県の村役場で働く聡子は、東日本大震災により仮設住宅暮らしを余儀なくされる。恋人も行方不明になったままだ。
住み慣れた家を離れての生活は心身に堪える上、人間関係の不和や騒音などの問題は日常茶飯事。仮設住宅のリアルな「きつさ」が描かれるからこそ、隣人へのいたわりの心を忘れない聡子らの姿が胸を打つ。
著者は仙台在住。震災のあった地で生きることを選び、行き場のない怒りや後悔を抱えながらも少しずつ前へ進む人々に向けられた視線はどこまでも温かい。(小学館・1180円)
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2022年3月12日 掲載
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