『新世代ミステリ作家探訪』
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円居挽の言葉に救われた 若林踏
[レビュアー] 若林踏(書評家)
ミステリの最前線で闘う作家たちの話が聞きたい。
そんな思いを胸に抱き、私は一年ちょっとの時間をかけて、十人のミステリ作家とトークセッションを行った。
円居 挽(まどいばん)、青崎有吾(あおさきゆうご)、逸木 裕(いつきゆう)、斜線堂有紀(しやせんどうゆうき)、呉 勝浩(ごかつひろ)、澤村伊智(さわむらいち)、阿津川辰海(あつかわたつみ)、矢樹 純(やぎじゆん)、方丈貴恵(ほうじようきえ)、太田紫織(おおたしおり)。いずれもデビュー十年以内(企画立案時)のミステリ作家である。彼らと交わした創作論、ジャンル論を収めたのが今回の『新世代ミステリ作家探訪』だ。
本のあとがきにも書いたが、『新世代ミステリ作家探訪』の企画は新型コロナウイルスが猛威を振るい、日常の風景が大きく変化していく過程とともに進んだ。二〇二〇年四月に一回目の緊急事態宣言が発令されて以降、政治経済は混乱を続け、人々は心休まらぬ日々を過ごしている。世の中がこんな有様なのに、悠長にミステリ小説の話などしていて良いものだろうか。そんな不安がよぎったこともある。
それでも一冊の本にすることが出来たのはゲストの一人、円居挽氏の「ある言葉」に突き動かされたことが大きい。
円居氏には二〇二〇年二月に「Live Wire High Voltage Cafe」で開催したイベント内で話を伺った。その時「これはぜひとも聞いておかねば」とかねてから思っていたことを質問した。円居氏の作品には人生の“ままならなさ”について深く考えさせられることが多いが、これは円居氏本人の思想が込められているのではないか。
この質問に円居氏はどのように答えたのか。それはぜひ本書を手に取って確認いただきたい。とにかく、その時の円居氏の言葉が心に突き刺さった。当時、抱えていた個人的な悩みごとも一気に吹き飛んでしまうような、前向きな力を私に与えてくれたのだ。
コロナ禍で“ままならない”ことが多くなったけれど、だからこそ円居氏の「あの言葉」は忘れないようにしたい。