<東北の本棚>生と死を見つめる絵本
[レビュアー] 河北新報
「生きるってどういうこと?」「死ぬとは?」-。絵本作家で万年筆画家の著者が、「死」から「生きること」を見つめた命の絵本。大人にも子どもにも、生きる意味を問い掛ける。親子で読んで、語り合うのもいい。万年筆と専用インクで描かれた絵は味わい深く、後々まで心に残る。
物語は、ある男が人生に絶望して、自ら掘った墓に入るところから始まる。男は死と引き換えに、身も心も解き放たれて自由になったが、男の姿は誰にも見えず、誰とも関われない。
ある日、男の姿が見える一人の少年に出会う。その人生を見守るうちに、風の香りや人のぬくもり、悲しみ、喜びを感じていたかつての日々を思い出していく。
自分の墓に戻ってきた男は「死ぬのはやめだ」「俺は生きる」と叫ぶ。でも、答えは返ってこない。
巻末に、使用した万年筆とインク、原画に使ったペーパーの一覧を掲載した。
著者は福島市出身。ウェブ制作会社などを経て2015年に独立した。万年筆を用いた新しい画法を追求しており、ワークショップなどを開く。著書に「明日死ぬかもしれないから今お伝えします」(KADOKAWA)など。
トゥーヴァージンズ03(5212)7442=1540円。