『氷結 上』
- 著者
- ベルナール・ミニエ [著]/土居佳代子 [訳]
- 出版社
- ハーパーコリンズ・ジャパン
- ジャンル
- 文学/外国文学小説
- ISBN
- 9784596550392
- 発売日
- 2016/11/25
- 価格
- 957円(税込)
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ルメートルの後継者、現る!仏ミステリーの大型新鋭!
[レビュアー] 香山二三郎(コラムニスト)
『その女アレックス』でフランス・ミステリーに新風を吹き込んだピエール・ルメートル。今年も各社の年間ベストテン企画を賑わしているが、ここで取り上げるのはルメートルと同様、新人作家の登竜門といわれるコニャック・ミステリ大賞を受賞し、今や彼の後継者の一人と目される新鋭のデビュー長篇だ。
舞台となるのはフランス・スペイン国境に横たわるピレネー山脈の山麓の町だが、まずは標高二〇〇〇メートルの山中にある水力発電所で猟奇事件が起きる。首を断たれ胴体を切り裂かれた死体がロープウェイ駅に吊るされていたのだ! といっても、殺されていたのは馬だったが、ただの馬ではない。地方政財界のドンで発電所の持ち主でもあるエリック・ロンバールの愛馬だった。
上層部から事件解決の特命を受けたトゥールーズ署の警部マルタン・セルヴァズは美貌の女性憲兵隊大尉イレーヌ・ジーグラーと組んで渋々捜査に乗り出すが、同じ頃、事件現場に近い場所にあるヴァルニエ精神医療研究所に新人の心理学者ディアーヌ・ベルクが着任していた。やがて現場からヴァルニエ研究所に収監されているシリアルキラーのDNAが採取され、ベルクも所内の不審な動きを察知するのだが……。
のっけからルメートルの都会ミステリーに優るとも劣らぬ猟奇趣向! 事件はやがて殺人事件へと発展していくが、主人公セルヴァズは「馬恐怖症、高所恐怖症、スピード恐怖症、山恐怖症」という繊細キャラ(笑)。そんな異色の硬派刑事と濃いキャラの仲間たちの活躍が読み所だが、それと並行して研究所の闇に迫る女性心理学者の冒険も描かれる。こちらはスリラータッチで、終盤には大胆なひねり技も繰り出され、まさにルメートルばりのサービス精神で読ませる。シリーズはすでに三作目まで刊行済だそうで、フランス・ミステリーにまた大型新人が現れたのは間違いない。