「そんなにイライラしなくてもいいのに」沖縄の人が運転中に攻撃的なクラクションを鳴らさない納得の訳

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沖縄の車がクラクションを鳴らさない?(Image by photoAC)

 沖縄の県民性の一つに沖縄タイム(ウチナータイム)がある。

 時間に縛られず、ゆったりと過ごす良いイメージがある一方、時間にルーズで約束を守らないという悪いイメージもある。

 こうした沖縄独自の慣習「沖縄ルール」を紹介しているのが、本土企業の沖縄進出をお手伝いしている伊波貢さんだ。

 なぜ、「15時ぐらい」で15時40分に来るのか? なぜ、お客様の前で社内事情をぶっちゃけるのか? なぜ、昇給・昇格を打診すると退職するのか? なぜ、主賓が来る前から飲み始めるのか?

 こうした沖縄の慣習をまとめた伊波さんの著書『沖縄ルール 知っておくとビジネスも人間関係もうまくいく!』(あさ出版)から、沖縄のおおらかで優しい県民性を紹介する。

クラクションを鳴らさないのはなぜ?

 東京や大阪で車に乗っていると、クラクションの音に驚くことが多くあります。信号待ちで青になっても動きださないと、後ろからすぐに「ブーー!!」と攻撃的なクラクションが鳴り響きます。そんなにイライラしなくてもいいのに、と思います。
 一方、沖縄ではクラクションを鳴らす車は、ほとんどありません。信号が青になっても前の車が動きだすまでじっと待つか、せいぜい「プッ」と軽くクラクションを鳴らすくらいです。国道でゆっくりと走る車がいても「あおり運転」をされることはほぼありません。後続車もゆっくりと後ろをついていくでしょう。

 沖縄人がこうした優しい運転をする理由は「県民性として攻撃するのが苦手」など諸説ありますが、私はすこし違うニュアンスが背景にあると考えています。
 ひとつは「仲間に対する気遣い」です。沖縄の人は相手がひとつでも年上であれば「シージャ」(年上の先輩、兄、姉)として敬いますし、同じ出身地や出身高校といった仲間意識を非常に強く持っています。
 沖縄本島でも北部エリアや、離島になるとさらにこうした仲間意識は強まります。伊江島のように、島に信号が1カ所しかないような場所であれば、車を運転している人のほとんどが知り合いのはずです。
「前の車を運転している人は知り合いかもしれない」と思ったなら、本土の人であっても攻撃的なクラクションは鳴らさないでしょう。沖縄の人には、仲間と思える人がまわりにたくさんいるため、「ブーー!!」とすることはないのです。


「仲間意識」と「時間間隔」の違い

悠々と時間が流れる場所だから、ゆっくり走ろう沖縄の道

 もうひとつは「時間感覚の違い」。沖縄の時間感覚は「ゆるい」のが特徴です。物事を突き詰めるのではなく、ほどほどの加減「テーゲー」(「大概」に由来する方言と言われています)で日常が成り立っています。そんななかで、5秒や10秒くらい車の発進が遅くなってイライラするほうがおかしいというわけです。
 運転にも「テーゲー」の感覚が染みわたっていて、大都会の感覚でむやみに正義感を振りまわすのではなく、沖縄の寛容文化を受け入れるようにすれば、クラクションを鳴らすこともなくなるでしょう。

 こうした、仲間意識と時間感覚の違いは、共通してビジネスシーンにも流れている思考です。「なんだか仕事の進め方がのんびりしているな」と思うことがあっても、イライラするのではなく、クラクションのことを思い出すといいでしょう。「テーゲー」の感覚、70点主義を忘れないことです。

 なお、車の運転に関しては本土とは違う慣習もあることを知っておくといいでしょう。
 例えば、停車するときに、ハザードランプではなくウインカーを出す人がいます。そもそも曲がるときにウインカーを出さない人もいたり、横道からは、ビックリするようなタイミングで飛び出してくることもあったり……などなど。「名古屋走り」など、ローカル色の強い運転慣習が各地にあるように、沖縄ならではの運転の仕方があることにも、慣れてほしいと思います。

伊波貢(沖縄進出コンサルタント)
沖縄進出コンサルタント ブルームーンパートナーズ株式会社代表取締役/CEO。1967年沖縄県生まれ。琉球大学経済学科卒業。沖縄県内初の証券アナリスト。株式会社コスモ証券経済研究所を経て、1996年4月に株式会社沖縄海邦銀行へ転職。その後、株式会社海邦総研の設立に携わり、設立とともに取締役経営企画部長に就任。約11年間にわたり経営に関与する。2015年1月に独立し、現職。沖縄地域経済・産業に関する研究をフィールドワークとしつつ、国や県および、自治体からの各種調査(観光・地域資源・経済波及効果調査など)業務を受託。公的機関支援事業の各種委員、審査員を兼任。地域経済・産業活動のコメンテーターとして新聞、テレビ、ラジオなどにも出演。著書に県内でヒットした『おきなわデータ算歩』(沖縄タイムス社)。琉球王国を建国した尚巴志王の末裔。

あさ出版
2024年10月17日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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