5分でわかる「孔子」「老子」「荘子」超解説!『論語』が面白くなる「チンピラをボコボコ」の武闘派伝説とは?

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荘子は寓話の解釈次第! 老子っぽい考えを物語でわかりやすく伝える

――荘子は、どんな思想家なのですか?

 荘子は、孔子より200年ほど後に生まれたとされる、古代中国が戦国時代に入った頃の思想家です。

 中国思想では「老荘思想」というように老子と一緒に語られることが多く、考え方に共通点が見られます。基礎となる考えに「万物斉同(ばんぶつせいどう)」というものがあり、全てのものは「道」の観点からすれば同じだということを言っています。

 そうした考えを、寓話を用いて説いているのが、荘子と老子の大きな違いです。

 荘子の有名な話に「胡蝶の夢」というものがあります。これは、荘子が蝶になった夢を見たが、目覚めてから、自分が蝶になった夢をみたのか、いまの自分は蝶が夢をみている姿なのかもしれない、ということが語られています。

 このように、荘子は伝えたいことをお話にして寓話的に語るので、よくよく考えると難しいけれど、なんだか直感的に理解できる気がするといった感想になるかもしれませんね。


山田史夫さん

――確かに、わかるようなわからないような不思議な気分になりますが、話が面白くてもっと読みたくなりますね。

 荘子は、老子よりとっつきやすいと思います。

 老子ってどんな人物かよくわかっていない部分もありますし、老いてからインドに渡ってお釈迦様に生まれ変わったという伝説があったりもして、どこか神秘的で“孤高の賢者”っぽいんですよね。

 それに対し、荘子は司馬遷の『史記』に漆(うるし)畑の管理人だった、と書かれているように、身近で親しみを感じさせる「巷(ちまた)の賢者」という印象です。

――老子は「孤高の賢者」で荘子は「巷の賢者」、孔子は「カリスマ教師」でしたよね。ぶっちゃけた話、山田教授は誰が一番お好きですか?

 うーん! 正直にお答えすると、私は孔子が一番好きですね(笑)。

 老子や荘子は人間というものを、自然という「道」の視点から、一歩引いた視点で見ているので、「ちっぽけなもの」ととらえているフシがあるんですよね。でも、孔子は人間への信頼というか、愛情が根幹に感じられるんです。だから、孔子が一番好きですし、今後もライフワークにしていけたらと思っています。

 でも、孔子、老子、荘子は私にとって中国古代思想家の“ビッグスリー”ですし、それぞれ違った良さがあり、いずれの思想にも色褪せない面白さがあります。私が訳した本でも、なるべくわかりやすく面白さが伝わるように書いたつもりですので、興味を持たれた方は、ぜひ手に取ってみてくださいね。

 ***

 11月に発売される予定の山田さんの新刊『荘子の哲学 斉物論篇』(トランスビュー)では、荘子の寓話をさらにわかりやすく、面白い解釈で紹介するという。初めて中国思想に触れる人にぴったりの一冊だろう。

山田史生
1959年、福井県生まれ。東北大学文学部卒業。同大学大学院修了。博士(文学)。現在、弘前大学教育学部教授。著書に『渾沌への視座 哲学としての華厳仏教』(春秋社)『日曜日に読む「荘子」』『下から目線で読む「孫子」』(以上、ちくま新書)『受験生のための一夜漬け漢文教室』『孔子はこう考えた』(以上、ちくまプリマー新書)『門無き門より入れ 精読「無門関」』(大蔵出版)『中国古典「名言200」』(三笠書房)『脱世間のすすめ 漢文に学ぶもう少し楽に生きるヒント』(祥伝社)『もしも老子に出会ったら』『絶望しそうになったら道元を読め!』『はじめての「禅問答」 自分を打ち破るために読め!』(以上、光文社新書)『禅とキリスト教 人生の処方箋』(共著)『禅問答100撰』(以上、東京堂出版)『龐居士の語録 さあこい!禅問答』(東方書店)『物語として読む全訳論語 決定版』『哲学として読む 老子 全訳』(トランスビュー)など。

Book Bang編集部
2024年9月24日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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