5分でわかる「孔子」「老子」「荘子」超解説!『論語』が面白くなる「チンピラをボコボコ」の武闘派伝説とは?

PR

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク

孔子とはどんな人物か? 出世街道から外れた“私塾のカリスマ教師”


――孔子は、紀元前500年前後の古代中国が春秋時代だった頃に活躍した思想家ですよね。何人かの弟子が孔子の教えを書きとめたものが、「子曰く~」で有名な『論語』であると、中学校の国語の授業で習いました。

 はい、その通りです。よく覚えてましたね。

 孔子は、現代でいうと「私塾のカリスマ教師」のようなもので、お弟子さんがいっぱいいる先生でした。ただし、塾といっても単なる学習塾ではなく、国家政治の中枢を担う人材をバンバン輩出する、超ド級のエリート塾です。孔子は、評判が評判を呼んで集った20歳になるかならないかの若者と旅をしながら、彼らに教えを説いていきました。

 何かに悩んだり、疑問をもったりした弟子が孔子に問いかけますと、孔子は、その弟子の性格なんかも見極めながら、会話をしていくのです。

 私は、孔子が弟子たちに一貫して伝えていたのは「よく生きる」ということだと思うんです。孔子が説いた「中庸」の考え方では、人間は常に変わるもので、変わっていくことができますよね。だから、より良い自分に変わろうとすることが、よく生きるということ。でも、何が「よい」のかも、定まってはいないものです。それを自分なりに追い求めていくことが、学ぶということ。そして、学びのもととなるお手本は、日常生活の些細な出来事の中にあるといいます。 些細なことの積み重ねが人生ですからね。その、些細なことを大切にして生きなさいね、ということが孔子の教えの根幹なのでしょう。

――孔子の教えってすごく素敵ですね。こんなにいい話をしてくれる先生なら、弟子が大勢いたのも納得です。

 でも、孔子自身は偉い人に取り立てられて出世するどころか、ご機嫌を損ねてしまっていろんな国にあちこち追いやられるような、不遇の期間が随分と長くあったんですよ。

――えっ!? そうなんですか。

 弟子には、「上司の顔色を見ずに、自分の意見を通そうと発言してはいけないよ」とか現実的なアドバイスをしているのに、孔子自身は国のトップにだって痛烈な批判を言い放ちますからね(笑)。

 「正論は正しいが、それを無理に通そうとすると正しくなくなることもあるぞ」とか、弟子へのアドバイスはすごく現実的で素晴らしいんですよ。だから弟子はどんどん偉くなっていくのに、孔子は最後までどこにも就職できないプー太郎でした。でも、身長が2メートル近くあって喧嘩にはめっぽう強く、襲い掛かってきたチンピラをボコボコにして弟子にしてしまったこともありました。

――まさに“両極端”な生き方をしていて面白いですね。

 人間味を感じますよね。孔子は、数多くいる中国思想家の中でも特に、人と人との関係性を重視していて、それを踏まえたうえで教えを説きます。

 人間関係を大事にしているからこそ、孔子の言葉は現実的なアドバイスになっていると思いますので、悩みをもった今の若い人にも『論語』はすごく響くんじゃないでしょうか。自身の進路や将来、生き方に悩んだ若い弟子たちと孔子のやり取りからは、現代社会にも役立つような気づきがたくさん得られると思いますよ。


山田史生さん

山田史生
1959年、福井県生まれ。東北大学文学部卒業。同大学大学院修了。博士(文学)。現在、弘前大学教育学部教授。著書に『渾沌への視座 哲学としての華厳仏教』(春秋社)『日曜日に読む「荘子」』『下から目線で読む「孫子」』(以上、ちくま新書)『受験生のための一夜漬け漢文教室』『孔子はこう考えた』(以上、ちくまプリマー新書)『門無き門より入れ 精読「無門関」』(大蔵出版)『中国古典「名言200」』(三笠書房)『脱世間のすすめ 漢文に学ぶもう少し楽に生きるヒント』(祥伝社)『もしも老子に出会ったら』『絶望しそうになったら道元を読め!』『はじめての「禅問答」 自分を打ち破るために読め!』(以上、光文社新書)『禅とキリスト教 人生の処方箋』(共著)『禅問答100撰』(以上、東京堂出版)『龐居士の語録 さあこい!禅問答』(東方書店)『物語として読む全訳論語 決定版』『哲学として読む 老子 全訳』(トランスビュー)など。

Book Bang編集部
2024年9月24日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク