3 観察
さて次は、いよいよ観察だ。
まず、採取してきたコケをガラスシャーレの中に移そう。そして、水(水道水でよい)をガラスシャーレの壁面の半分と少しくらいの高さまで加える。このとき、コケをガラスシャーレに入れすぎると砂粒も多く混じってしまう。こうなると、後になって顕微鏡でクマムシを見つける時に砂粒が邪魔になって探しにくくなる。
この状態でガラスシャーレに蓋をかぶせ、そのまま一晩放置する。このような処理をすることで、コケの中の乾眠状態のクマムシは吸水して復活し、コケの外に這い出してくるのだ。
さて、一晩が経過した。
まず、ガラスシャーレからコケをピンセットで取り除き、いよいよ顕微鏡を覗いて、コケから出てきたクマムシがいるか観察する。
顕微鏡の倍率は20~30倍ほどで観察し、クマムシを探していく。ちなみに、慣れてくると10倍ほどでクマムシを探し出すことができるようになる。何事も鍛錬が必要だ。
クマムシ歴の浅いうちはコケリテラシー(クマムシがすんでいるコケを選別できる能力)がまだ低いため、5カ所くらいからコケを採ってきて観察するのがよいであろう。
少しでも多くの人に、クマムシと出会う機会が訪れることを願って止まない。
***
すでに述べた強力な耐性のほかにも、最近ではクマムシについて、「弾に詰められて銃で発射されても死なないことを英ケント大の研究者が実験で確かめた。と言っても、これは悪趣味な実験ではなく、クマムシのような生命力の強い生物が隕石(いんせき)などにくっついて宇宙を移動できるかの検証の一環という」(2021年6月19日 朝日新聞デジタル)。
どこまで最強なんだ! クマムシ!!
2023年1月に行われた大学入学共通テストの英語リーディング問題にも、「地球上で最強の生物と考えられるクマムシ」の英文が出題され話題になったとか。実は「旬」な生き物でもあるクマムシを、ぜひ観察してほしい。
※『クマムシ博士の「最強生物」学講座―私が愛した生きものたち』から一部を引用、再構成。
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