実は「都会でも採れる」地球最強(?)生物「クマムシ」で自由研究! 宇宙に10日間放り出しても復活する驚きの生態を専門家が解説

ニュース

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク


都会でも捕獲可能なクマムシ

 生き物好きの家庭なら、顕微鏡を持っている、という人もいるのでは? 顕微鏡を使って本格的な研究をするのにご紹介したいのが「クマムシ」。

 実は地球上で最強かもしれない生き物なのだ。

「クマムシ」とは、体長0.1~1.0ミリほどの「緩歩(かんぽ)動物」という分類の生き物。歩く姿がクマのように見えることからその名がついた。

 現在、千種類以上が見つかっているが、種類によって海にも山にも、南・北極の氷の世界にも生存している。もちろん、私たちが暮らす街の中にも。

 すべての種類が水分のあるところに生息するものの、まわりに水がなくなると、体を乾燥させて「乾眠(かんみん)」と呼ばれる仮死状態になる。この、乾眠状態のクマムシがすごい! マイナス273度の低温・プラス100度の高温、人の致死量の千倍相当の放射線、紫外線や水深1万メートルの75倍に匹敵する圧力、酸素がまったくない真空状態、すべてへっちゃら!というすごい耐性を持っているのだ。

 実験では宇宙空間に10日間さらされても、地球に帰還後、水分を得ると復活することも分かった――そんなすごいやつをこの目で見てみたい!

『クマムシ博士の「最強生物」学講座―私が愛した生きものたち』(堀川大樹/著)から一部抜粋で、捕獲・観察の方法を紹介しよう。

 ***

クマムシ捕獲計画実行中

 クマムシを実際に見たことがある人は、どれほどいるだろう。クマムシの採集や観察に興味があっても、どうしたらよいか分からずに二の足を踏んでいる人も多いだろう。

 そこで、ここでは「クマムシを見てみたい」という読者のために、クマムシの採集と観察のハウツーを紹介したい。それでは、レッツ・捕獲・クマムシ。

1 採集・観察のための道具

 まずは、クマムシの採集と観察をするために必要な道具をそろえよう。

1 封筒/2 ポーチ/3 シャープペンシルなどの筆記用具/4 薬さじ/5 洗浄瓶/6 ピンセット/7 スポイト/8 時計皿/9 ガラスシャーレ/10 実体顕微鏡

 これらの道具は、実体顕微鏡を除けば特に高価なものはない。実体顕微鏡の価格は4~5万円から数十万円するものまでピンキリだ。一般に普及しているのは倒立型顕微鏡だが、これはクマムシの観察には実は不向きである。顕微鏡の購入を検討している読者には、観察台の下から光を当てられる光源の付いた、透過型の実体顕微鏡をお薦めする。

2 採集


コケがクマムシの住処

 それでは、早速クマムシの採集に出かけよう。

 クマムシはいったい、どんな場所にすんでいるのだろうか。前述したように、彼らは山や川や池にもすんでいるが、市街地の道路に生えている乾燥したコケにもよく見られる。

 そう、あなたの家のすぐそばにすんでいるのだ。

 今回、助手とともに東京都内の市街地にクマムシ採集へと出かけた。

 クマムシがすんでいるようなコケは道路の端に生えていることが多いので、道路の端を注意深く観察する。乾燥していてかつ薄く生えているようなコケが、クマムシにとって快適なすみかだ。いかにも何かがいそうな、湿っていたり分厚く生えている緑色のコケは、クマムシの生活環境としてはあまり適していないのである。

 探すこと30分、民家の壁の下に、クマムシが好みそうな良い感じのコケを発見した。薬さじを使ってコケを剥ぎ取り、封筒の中に――採取完了だ。ところで、道路脇でひとりコケを採取している姿は、どうしても通行人の注目を誘ってしまう。しかしこれは仕方のないことなので、この際、恥じらいは捨てておこう。クマムシと同様、ストレスには耐えなければならない。

 コケを封入した封筒には、採取した年月日と場所の記入を忘れずにしておく。乾燥したコケの中にいるクマムシは、乾眠状態になっている。乾眠状態では、室温で1年くらいは生きたまま保存可能だ。冷凍庫に入れておけば、数十年ほどもつと思われる。

デイリー新潮
2024年8月18日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク

株式会社新潮社「デイリー新潮」のご案内

数々のスクープを連発し社会に衝撃を与え続ける総合週刊誌「週刊新潮」が発信する最新の話題に加え、社会問題の深層に切り込む月刊誌「新潮45」の深掘り記事を配信するニュースサイトです。
2誌の記事を両輪とし、綿密な取材に裏打ちされた確かな記事で既存のウェブメディアとは一線を画した「速く、深い」情報をお届けします。