コロナ禍初期の緊迫感を追体験 直木賞受賞作『ツミデミック』作者の一穂ミチが語ったメッセージ[文芸書ベストセラー]

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 7月23日トーハンの週間ベストセラーが発表され、文芸書第1位は『成瀬は天下を取りにいく』が獲得した。
 第2位は『暗殺』。第3位は『なぞとき』となった。

 4位以下で注目は6位に初登場の『ツミデミック』。7月17日に発表された第171回直木賞の受賞作だ。『スモールワールズ』(講談社)、『光のとこにいてね』(文藝春秋)でも直木賞にノミネートされていた一穂ミチさん。3度目の候補で受賞となった。同作はコロナ禍での犯罪を描いた短編集。先の見えない不安のなか犯罪にかかわってしまった多様な人々の人間模様が描かれる。

 一穂さんは刊行時のロングインタビューで《やっぱり小説を書く時のテンションは現実に引っ張られていました。たとえばコロナ禍の渦中って、収束しかけてもまた変異株の話題が出てきたりして、「ああまたか」とすごく気持ちが落ちることが多かったんです。だから三話目の「憐光」あたりまではすごく憂鬱になっていた時のことが反映されている気がします。でも四話目の「特別縁故者」くらいから、現実とリンクして徐々に物語も明るく終わるようになってきました。》と執筆中の心境の変化を明かす。そして《今回は自分もコロナ禍に振り回されながら、コロナ禍のことを書くという試みだったので、現実を反映せざるを得なかった。やっぱりこれを書いていた時期って「コロナの状況が変わらないまま十年、二十年って過ぎるんじゃないか」と思ったこともありましたし。小説にそういう緊迫感を保存したような気がします。》と世界中の人々が当事者だったあの時期を追体験できるような作品だと語っている。

 一穂ミチロングインタビュー「コロナ禍は私たちにとって『箱庭の洪水』だった」はBookBangにて全文掲載中。

1位『成瀬は天下を取りにいく』宮島未奈[著](新潮社)

中2の夏休みの始まりに、幼馴染の成瀬がまた変なことを言い出した。コロナ禍、閉店を控える西武大津店に毎日通い、中継に映るというのだが……。さらにはM-1に挑み、実験のため坊主頭にし、二百歳まで生きると堂々宣言。今日も全力で我が道を突き進む成瀬から、誰もが目を離せない!話題沸騰、圧巻のデビュー作。(新潮社ウェブサイトより)

2位『暗殺』柴田哲孝[著](幻冬舎)

元総理が凶弾に倒れ、その場にいた一人の男が捕まった。日本の未来を奪った2発の弾丸。本当に“彼”が、元総理を撃ったのか?日本を震撼させた実際の事件をモチーフに膨大な取材で描く、傑作サスペンス。(幻冬舎ウェブサイトより)

3位『なぞとき』畠中恵[著](新潮社)

あの屈強な佐助が血だらけになって、犯人は小鬼の鳴家だってぇ?菓子職人・栄吉の新作あられの味見会は見合い話を掴む場になっちゃうし、若だんなと妖は摩訶不思議な怪異に遭遇、おまけに若だんなは独立する奉公人の世話をしろと命じられちゃった!若だんなと長崎屋の妖達はすべての謎を解けるの~?シリーズ第23弾!(新潮社ウェブサイトより)

4位『成瀬は信じた道をいく』宮島未奈[著](新潮社)

5位『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。Another』汐見夏衛[著](スターツ出版)

6位『ツミデミック』一穂ミチ[著](光文社)

7位『クスノキの女神』東野圭吾[著](実業之日本社)

8位『ノクツドウライオウ 靴ノ往来堂』佐藤まどか[著](あすなろ書房)

9位『捨てられた僕と母猫と奇跡 心に傷を負った二人が新たに見つけた居場所』船ヶ山哲[著](プレジデント社)

10位『明智恭介の奔走』今村昌弘[著](東京創元社)

〈文芸書ランキング 7月23日トーハン調べ〉

Book Bang編集部
2024年7月27日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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