【話題の本】『百年の孤独』ガブリエル・ガルシア=マルケス著、鼓直訳

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■半世紀越しの文庫化

コロンビアのノーベル賞作家、ガブリエル・ガルシア=マルケスの代表作が没後10年の節目に文庫化された。新潮社から邦訳の単行本が刊行されたのは昭和47年。世界的なベストセラーながらなかなか文庫化されず、「文庫化すれば世界が滅びる」という都市伝説まで生まれた待望の文庫本は、「発売1週間で10万部突破が見えた」(同社)と売れ行きも破竹の勢いだ。

寒村を開墾しながら数奇な運命を生きる一族の百年の歴史を描いた本作は、非現実的なできごとを緻密な描写でリアルに感じさせる「マジックリアリズム」の金字塔として知られる。大江健三郎さんら、日本の作家に与えた影響も数知れず。文庫本解説の筒井康隆さんは「小説はもはや何をどう書いてもいいのだと思い込んで」しまい、後の『虚人たち』『虚航船団』といった長編に結実したと明かしている。

ともすれば「難解」の一語で敬遠されることもあるマルケス作品。新潮文庫編集部の菊池亮さんは「マルケス自身は『文学は人をからかうためにある』と発言するようなユーモラスな作家。文庫本を手にした若い人の中から、小説ならではの表現を追求していく作り手が出てくれば」と熱く語った。(新潮文庫・1375円)

村嶋和樹

産経新聞
2024年7月6日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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