クレーム対応で言ってはいけない「謝罪フレーズ」とは? 従業員や組織を守るための基本を紹介

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謝罪がカスハラを加速させる理由(Image by photoAC)

 連日、カスハラに関するニュースが報道されています。皆さんも目にされているのではないでしょうか。

 それだけ客が理不尽なことを要求してくる「ハードクレーム」、暴言や嫌がらせなどが伴う「カスタマーハラスメント」への対策は多くの企業・組織にとっての急務であるということです。

 クレームは時代と共に性質が変わり、今や対応を間違えると、問題が悪質化し、取り返しのつかない事態を引き起こすといったケースも少なくありません。

 そこでクレーム対応百戦錬磨の研修講師で『カスハラ、悪意クレームなど ハードクレームから従業員・組織を守る本』(あさ出版)の著者である津田卓也氏に、問題が悪質化しないハードクレーム&カスハラ対策の要点を教えていただきました。

謝罪は部分的にする

 カスハラやハードクレームに限らずクレームを受けたら、どんなケースでも最初に「部分謝罪」します。
 部分謝罪とは、何に対してのお詫びかを、明確に言葉にして謝罪することです。
 お詫びの言葉があるだけで、お客様の怒りを落ち着かせることができ、クレームの内容を具体的に聞き出しやすくなるためです。
 ただし、謝罪をしたことで相手が強気になり、心理的に追い詰めてくる悪意クレームに発展してしまうこともありますので、どんなに慌てていても、相手の主張を全面的に認めて謝罪することは絶対にしてはいけません。
 実際は相手に非があったとしても「さっきは非を認めて謝ってきたじゃないか!」と対応の一貫性のなさを指摘されて状況が悪化しかねません。万が一、訴訟に発展したら不利になることもあります。
 必ず、「お客様に今ご不便をお掛けしていることについて、誠に申し訳なく思っております」というように、明確に伝えましょう。

 使い勝手の良い部分謝罪フレーズを5つご紹介します。各フレーズが何に対して限定的な謝罪を行っているのかに注目してください。

「ご不快な思いをさせてしまい、申し訳ありませんでした」
→販売店、飲食店、アミューズメント施設、接客に慣れていないアルバイトのスタッフが多い時期や新人が多い時期など、スタッフ対応でクレームが多い現場で使用。

「ご心配をお掛けしてしまい、申し訳ありませんでした」
→保育所、学校、介護施設など、連絡系統が煩雑だったり、忙しかったりで、迅速な事実確認ができない現場で使用。

「ご不便をお掛けしてしまい、申し訳ありませんでした」
「ご迷惑をお掛けしてしまい、申し訳ありませんでした」

→交通、インフラ、役所、メーカーなど、不具合が起こるとお客様の生活やお仕事に支障が出てしまう現場で使用。

「お時間をとらせてしまい、申し訳ありませんでした」
→コールセンターや案内所、レジなど、常に混雑していたり、確認に時間がかかったりでお待たせすることが多い現場で使用。

 ほかにも、次のような部分謝罪のフレーズはあらゆる場面で使えますので覚えておきましょう。

「ご足労をお掛けし、申し訳ありませんでした」
「お手数をお掛けし、申し訳ありませんでした」
「説明が不足し、申し訳ありませんでした」

言ってはいけない謝罪フレーズ

 一方、絶対に言ってはいけないフレーズがあります。

「今後二度と、このようなことがないようにいたします」
「今後、ご迷惑をお掛けするようなことは絶対にありません」

「二度としない」「絶対しない」というのは、クレーム対応だけでなく、どんな場合であっても言葉にすることは避けるべきです。なぜなら、その言葉を守れなかったときに責任をとれないからです。
 事実関係がはっきりするまで「全面的なお詫びはしない」というルールを設けている企業もあるようですが、クレームは初期消火が肝心です。相手の怒りをとにかく収める方向に進めないとこじれるだけですので、初動は必ず部分謝罪を行いましょう。
 自分たちに非がないのに謝罪するのは、なかなか気持ちの整理がつかないかもしれません。そのお気持ちは痛いほど分かりますが、そのほうが後の対応が楽になります。先に挙げたような部分謝罪をフレーズごと覚えてしまい、スムーズに使えるようにしておきましょう。

現場で連携して解決にあたる

 ハードクレーム対応の肝はなんといっても「連携」です。クレームの対応者を孤立させてはいけません。ここがクレームの収束に大きな差をつけます。
 クレームが発生したら、いざというときにすぐに協力を得られるように、周囲に「ハードクレームが発生しています」と知らせます。
 対面でお客様に対応している場合は、仲間だけにしか分からない合図や合言葉を使います。
 合言葉は「○時から備品の搬入があります。私の代わりに対応をお願いできますか?」など、相手の耳に入っても心情を刺激することのないような言葉を選びましょう。窓口の内側など、お客様から見えない位置にボタンを設置し、異常事態の発生を同僚や警備に知らせるシステムを導入している組織もあります。

 客先に訪問をする場合は、複数人で訪れるのが原則です。こじれそうなクレームの場合は近くにもう一人、自由に動けるスタッフが待機します。あらかじめ決めておいた時間内に連絡がなければ、上司が電話を掛けて状況を確認するとか、待機していたスタッフが家を訪ねるなど、状況を複数人で把握できる状態にしておきましょう。
 また、対応が30分間経過したら、人員を交代することも有効です。お客様と対応中のスタッフとの相性の悪さがクレームの原因となることもあるので、対応者を変えただけで解決につながるケースがあります。

 クレーム対応では「人を代える」「場所を代える」「時を代える」の“3つの代える”を実践すると、相手のクールダウンを促す効果が期待できます。
 いざというときにスムーズに対処するために、誰がどのような順番で交代するのかまで、チームでルールを決めておきましょう。

 他のスタッフがハードクレーム対応しているのを見たら、今度は自分が対応することになるかもしれないと考え、皆が自分事として解決にあたることで連携が強まります。
 それぞれがお互いを思いやりすべきことをする。
 連携してクレーム対応に取り組んでいる現場では、結束が強くなり、職場環境まで良くなっています。

津田卓也(ツダタクヤ)
株式会社キューブルーツ(Cube Roots)代表取締役。1995年ブックオフコーポレーション株式会社に入社し、2000年にはブックオフコーポレーションの年間MVP獲得。2005年にセミナー&研修会社キューブルーツを設立。特に、OJT(部下指導)研修・メンタルヘルスマネジメント研修・クレーム対応研修は、国内随一の登壇実績を持ち、2023年にはセミナー受講者数が15万人を突破。メディアでも活躍し、フジテレビ『バイキングMORE』、テレビ東京『解禁! 暴露ナイト』、テレビ東京『ワールドビジネスサテライト』、NHK『あさイチ』等に出演。執筆活動にも力を入れており、雑誌では『日経ビジネスアソシエ』等にも寄稿。著書に『どんなクレームも絶対解決できる!』(あさ出版)、『なぜか印象がよくなるすごい断り方』(サンマーク出版)など。

あさ出版
2024年7月16日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

あさ出版

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