*
人間が豊かさを喜べないのはなぜなのだろうか? 豊かさについてごく簡単に考察してみよう。
国や社会が豊かになれば、そこに生きる人たちには余裕がうまれる。その余裕にはすくなくとも二つの意味がある。
一つ目はもちろん金銭的な余裕だ。人は生きていくのに必要な分を超えた量の金銭を手に入れる。稼いだ金銭をすべて生存のために使い切ることはなくなるだろう。
もう一つは時間的な余裕である。社会が富んでいくと、人は生きていくための労働にすべての時間を割く必要がなくなる。そして、何もしなくてもよい時間、すなわち暇を得る。
では、続いてこんな風に考えてみよう。富んだ国の人たちはその余裕を何に使ってきたのだろうか? そして何に使っているのだろうか?
「富むまでは願いつつもかなわなかった自分の好きなことをしている」という答えが返ってきそうである。たしかにそうだ。金銭的・時間的な余裕がない生活というのは、あらゆる活動が生存のために行われる、そういった生活のことだろう。生存に役立つ以外のことはほとんどできない。ならば、余裕のある生活が送れるようになった人たちは、その余裕を使って、それまでは願いつつもかなわなかった何か好きなことをしている、と、そのように考えるのは当然だ。
ならば今度はこんな風に問うてみよう。その「好きなこと」とは何か? やりたくてもできなかったこととはいったい何だったのか? いまそれなりに余裕のある国・社会に生きている人たちは、その余裕を使って何をしているのだろうか?
株式会社新潮社のご案内
1896年(明治29年)創立。『斜陽』(太宰治)や『金閣寺』(三島由紀夫)、『さくらえび』(さくらももこ)、『1Q84』(村上春樹)、近年では『大家さんと僕』(矢部太郎)などのベストセラー作品を刊行している総合出版社。「新潮文庫の100冊」でお馴染みの新潮文庫や新潮新書、新潮クレスト・ブックス、とんぼの本などを刊行しているほか、「週刊新潮」「新潮」「芸術新潮」「nicola」「ニコ☆プチ」「ENGINE」などの雑誌も手掛けている。
▼新潮社の平成ベストセラー100
https://www.shinchosha.co.jp/heisei100/
関連ニュース
-
糖質中毒は薬物中毒に匹敵する 糖尿病専門医が語る糖質中毒の治し方がベストセラー[新書ベストセラー]
[ニュース](自己啓発/家庭医学・健康)
2022/02/12 -
村上春樹の長編小説『ねじまき鳥クロニクル』の舞台が2月から上演
[映像化](日本の小説・詩集)
2019/09/10 -
ビートたけし「オイラたち芸人は、猿回しの猿なんだ」あの問題発言の真意を語った一冊に注目
[ニュース](政治/タレント本/心理学/エッセー・随筆/演劇・舞台)
2019/12/14 -
又吉直樹が「今年読んだオススメの5冊」を発表[アメトーーク!読書芸人特集①]
[ニュース/テレビ・ラジオで取り上げられた本](日本の小説・詩集/ミステリー・サスペンス・ハードボイルド)
2016/11/11 -
「有名人をスルーすることで自分の地位をあげようとするヤツがいるんですよ」山田ルイ53世のSNS評に納得[ゴロウ・デラックス]
[ニュース/テレビ・ラジオで取り上げられた本](テレビ/タレント本/ステージ・ダンス)
2018/07/21