脳科学者が解説 なぜ「おりがみ」は認知症予防に効果があるのか? 脳活に良い折り方も紹介

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「もの忘れが多い」「人の名前が出てこない」といったことが”おりがみ”で改善できるとしたら、あなたはどうしますか?

 近年、世界の様々な研究でおりがみが脳にいいことがわかってきています。そこで今回は『脳科学でわかった! 80歳からでも若返る すごい脳活おりがみ』(伊達博充・著、西剛志・監修/あさ出版)から、86歳の現役建築士と数々のベストセラーを生み出した脳科学者が、「おりがみ」を折ることで、いくつになっても元気な脳を保つ方法を紹介します。

■おりがみで脳のあらゆる部分を活性化!

みなさん、こんにちは。脳科学者の西剛志です。
今回、おりがみの本を監修するにあたり、世界中の指先と脳に関する研究を調べる中で驚いたことがたくさんありました。
手を細かく使っておりがみを折ることや、独自のおりがみ作品を生み出したり、マニュアルを読んで人に折り方を教えたりすると、脳の老化を防ぐことができる、ということが最新の研究でもわかってきているのです。

たとえばおりがみは指先を使って折りますが、指の運動と脳の関係についてみてみると、手の動きは、「握力把握」と「精密把握」の2つに大別できます。

握力把握は、ボールや鉄棒などを握る単純な動きです。
精密把握は、細かなものを箸でつまんだり、紙を折ったりするなど器用さが必要な動きをいいます。当然おりがみの動きとしては「精密把握」になりますね。

この2つは、それぞれ脳のまったく違う部分を活性化させることがわかっています。
握力把握では、脳の運動野(運動をつかさどる場所)だけが活性化します。
一方の精密把握では、認知機能(理解したり、判断したり、論理的思考をする機能)をつかさどる前頭前野を含めた脳のあらゆる場所が活性化します。具体的にいうと、イメージをつかさどる「運動前野」や「帯状皮質運動野」(「これをやったら楽しそう」「これをやったら達成感を感じられそう」と認知する場所)、「後部頭頂皮質」(指先で触れた物体の形状などを識別する場所)が活性化します。

精密把握である、おりがみのような作業をするだけで、認知機能が上がり、脳の老化防止に期待がもてるといえるのです。


握力把握と精密把握

■速く折ることで記憶力や意欲がアップ

また、おりがみを速く折ることも脳にいい影響を与えることができます。

あるピアニストの研究で、指を速く動かせるピアニストのほうが、より脳の神経細胞が活動していることがわかりました。
つまり、指を速く動かせるかどうかは指の筋力の違いではなく、脳の活動状態の違いだったのです。
歳を取るといろいろなところの筋力が衰えますが、指を速く動かすことに関しては、筋力はあまり関係ないということです。

実際に歳を取っても指を速く動かす練習をすると、認知機能が上がる、という研究結果もあります。これは、指を速く動かすことで、神経細胞が活性化するためで、そうすることで、記憶力の向上や脳のネットワークを増やすのに効果的だといわれています。

さらに、速く折ることには、やる気を上げる効果もあります。
理化学研究所の脳に関する研究では、作業をやってもらうだけじゃなく、残り時間を示しました。すると、脳の側坐核という部分が活性化することがわかりました。

この側坐核は神経伝達物質のドーパミンで快感を覚える場所です。ドーパミンはやる気ホルモンともいわれます。
たとえば、子どもに単に「勉強しなさい」といってもやる気が上がりませんが、「あと10分で計算問題と書きとりをやって」というと、ものすごく意欲が出てきます。なぜなら側坐核がドーパミンで活性化するからです。
もちろんおりがみを折るときも、時間を決めて速く折ると、意欲が出てきます。

また、側坐核が活性化すると、脳の前頭前野の活動が低くなることがわかっています。前頭前野は疲れを感じさせる場所でから、側坐核が活性化すると疲れにくくもなります。
つまり、制限を設けないでおりがみを折るよりも、時間を決めて速く折ったほうがやる気が出るし疲れないとうわけです。

ただし、おりがみを折るスピードには個人差がありますので、まずは折ってみて、いまのタイムを計り、そのタイムから明日は5秒縮めるようにする、などの目標をもって取り組むといいでしょう。

なお、おりがみを速く折るには簡単なものから始めるのがベストです。
ということで、ここからは86歳にして現役の建築士であり、また創作おりがみ作家でもある伊達さんに伊達流脳活おりがみをいくつか紹介していただきましょう。

■伊達流脳活おりがみにチャレンジ

みなさんこんにちは。創作おりがみ作家の伊達です。
では、さっそく実際に手を使っておりがみを折っていきましょう。
まずは、おりがみの練習として、私が創作おりがみを折るときの基本形としている「やっこさんベース」を紹介します。
この折り方は、おりがみのトレーニングであると同時に、おりがみで作品を作る前の「折り筋」作りを目的としています。
折り筋…おりがみを折る際につける折り目。折り筋をしっかりつけておくと、おりがみを畳むように折ることができます。

この「やっこさんベース」は、伝承おりがみ(昔からあるおりがみ)のやっこさんが元になっています。複合おりがみ(2枚以上のおりがみでひとつの作品を作ること)で作る、私のオリジナル創作おりがみでは、「犬」や「猫」といったの四つ足動物を作るときのベースにしています。

折り筋を作るときのポイントは次の5つです。
●おりがみの色がわかりやすいように、おりがみと違う色の紙の上で折る。
●折るときに点と点(角と角)をピタリと合わせる。
●折るときに線と線をピタリと合わせる。
●折ったら指先に力を入れて、折り筋をなぞる。
●やさしく、いとおしむように折る。

点と点をピタリと合わせておかないと、動物を折ったときに、顔の表情が歪んでしまいます。線と線をピタリと合わせておかないと、見た目がきれいにできあがりません。
もし、お孫さんと折る機会があれば、ぜひ、ていねいに折ることを教えてあげてください。子どもの頃から、「点と点を合わせる」「折り筋をつける」練習をしておくと、集中力も身につくことでしょう。


基本の折り筋 やっこさんベース

おりがみを折るときは、最初は、「速さ」よりも「ていねいさ」を大切にしてください。
何度も何度も挑戦して、きれいに折れるようになったら、次のステップとして、速く折れるトレーニングをしていきましょう。雑に折ると、仕上がりがきれいにならないので、せっかく折り上がってもよろこびが半減してしまいます。

この基本形が手早くきれいに折れるようになったら、私の創作おりがみの代表的な作品の一つ「犬」にも挑戦してみてだくさいね。

監修者:西剛志(にしたけゆき)
脳科学者(工学博士)、分子生物学者。T&Rセルフイメージデザイン代表取締役。1975年、宮崎県高千穂生まれ。東京工業大学大学院非常講師や特許庁を経て、2008年に企業や個人のパフォーマンスをアップさせる会社を設立。子育てからビジネス、スポーツまで世界的に成功している人たちの脳科学的なノウハウや、大人から子どもまで才能を引き出す方法を提供するサービスを展開し、企業から教育者、高齢者、主婦など含めて1万人以上をサポート。テレビなどの各種メディア出演も多数。

著者:伊達博充(だてひろみつ)
一級建築士であり、創作おりがみ作家としても活動している。1938年、大阪市都島区生まれ、鹿児島市出身。旭化成工業(現・旭化成)や大和ハウス工業などを経て、1966年に独立し、現在に至る。本業のからわら「おりがみ倶楽部」を主宰しており、創作おりがみでは「紙わざ大賞30」「紙わざ大賞31」などに入選している。

監修者:西剛志(にしたけゆき)/著者:伊達博充(だてひろみつ)

あさ出版
2024年7月4日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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