『がん「エセ医療」の罠』
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医療界の闇を実名で告発
[レビュアー] 佐藤健太郎(サイエンスライター)
近年、がん医療は長足の進歩を遂げ、長期生存が可能なケースも多くなった。だがいまだ治りにくいがんも多く、罹患を告げられた者、余命を宣告された者の精神的動揺は計り知れない。
こうした不安につけこみ、実際には治せる見込みのない治療法で荒稼ぎを目論む医師が、残念ながら少なからず存在している。岩澤倫彦『がん「エセ医療」の罠』は、こうした詐欺的医療の実態に迫った一冊。エセ医療を行う医師や医療機関を、すべて実名を挙げて告発するという凄まじい内容だ。
現在、がんに対しては、標準治療と呼ばれる治療法が確立されている。科学的な根拠に基づく、現在利用できる最良の治療法とされるものであり、基本的に公的医療保険が適用となる。一方、エセ医療者たちの多くが掲げるのは免疫細胞療法というもので、彼らはこれがあたかも最先端の治療であるかのように喧伝し、副作用も少なくステージ4のがんさえも治療可能であると、甘い言葉をささやきかける。患者たちは最後の希望にすがり、実際には効果の実証されていない治療に巨額を投じてしまうのだ。悲しいかな、ふだんは合理的な思考をする人たちも、いざ自分ががんとなると、こうした甘言に搦め捕られてしまうケースが多いという。自分は大丈夫、とは誰も言えないのだ。
テレビCMなどで話題の線虫によるがん検査なども取り上げられ、一読に値する。暗躍するエセ医療から身を守るため、現代人なら読んでおくべき一冊だ。