『文書館のしごと』
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『文書館のしごと』新井浩文著
[レビュアー] 清水唯一朗(政治学者・慶応大教授)
図書館や博物館には立ち寄る。でも、文書館はという方が大半だろう。長年携わり、初代認証アーキビストとなった著者がその仕事の秘密を描き出す。
地域に残る文書を保存し、公開する。それは地域の歴史を伝えていくだけに留(とど)まらない。不正を防ぎ、静かに、しかし堅固に民主主義を守る方法となる。
対象は政府が作成する公文書だけではない。民間に残る私文書にも今に繋(つな)がる公の性格があるという。それが群として伝えられることで、土地の、人の歴史を紐(ひも)解(と)くことができる。
公文書館法の施行から三六年を経て、文書館は都道府県や政令指定都市だけでなく市町村にも置かれるようになった。展示も充実し、探求学習への協力など裾野も広がっている。
一方、昨年末には文書館を担うアーキビストの採用が話題となった。会計年度任用職員で繋いできた結果、正規職員でも応募がないケースもあるという。
記録が軽んじられると何が起こるか、私たちは学んできた。守るためには活(い)かすのがよい。そこは私たちの歩みを捉えなおす「歴史する」場なのだから。(吉川弘文館、2200円)